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     【海上自衛隊時代の話】 現在増殖中、終了未定
















海上自衛隊に入って1週間目
入隊式が終わった直後なので、髪の毛を切って制服を着ただけで、
まだ娑婆の人間の感覚は全然抜けていません。


看護婦さんもいる広い身体検査場で、ついたても何も無い所で、3人そろって
パンツを足首まで下ろすと、医者が3人のちんちんを順番に「ぎゅっ」と握っ
て、「ぐにゅっ」ってしごいてちんちんの異常の有無を調べ、終わったら、回
れ右して手を床に付けると、3人の肛門の穴を順番に手で広げて異常の有無を
検査されるという旧軍からの伝統儀式「M検」も終わった頃で、「俺、もう生
きてらんない・・・」ってショックを受ける童貞な奴多数(^^)


私はと言えば、戦記物でしか読んだ事のない「M検」を自分が体験出来て面白
かったですよ。この時期は集団で大風呂に入った時、自分のちんちんを見られ
るのが恥ずかしくて前を隠すと「ばかもーんっ!前を隠すな!お前は女かっ!」
って怒られる世界だとは知らない頃ですね。理由:集団生活だから伝染病予防
と浴槽の汚れを極力少なくするための躾教育






横須賀教育隊時代、短艇教練、2等海士(19)
3番漕手(右舷の前から2番目)

カッターを全力で漕ぐとお尻の皮がむけてパンツが血で
真っ赤になって、風呂に入ると痛みで飛び上がります(^^)




2等海士(19)入隊後1ヶ月
毎日の訓練の成果で顔の形が変わっています。(2ヶ月目に顔は治りました)
海上自衛隊とは日本海軍だったなんて想像もしていなかった頃です。この頃は
入隊前の基礎体力が何も無いので、何をやってもビリから5番以内でした。


0600 総員起こし
0605 総員体操用意
0615 甲板掃除
0630〜0745 食 事
0800 国旗掲揚後課業整列(課業始め)
0810〜0900 教務 第1限
0905〜0955 教務 第2限
1005〜1055 教務 第3限
1100〜1150 教務 第4限
1200 課業止め後、食事
1255 総員体操用意
1300 課業始め
1320〜1410 教務 第5限
1415〜1505 教務 第6限
1510〜1600 教務 第7限
1610〜1640 別課
1630 課業止め
日没時 国旗降下
    〜1930 食事・入浴等
1940〜2040 自習
2045 甲板掃除
2115 巡検
2200 消灯


【上の表の解説】
朝6時に起床ラッパが鳴ってから、ベットをざっと治して急いで作業服に着替
えて隊舎前に整列して番号やって1分40秒以内に「総員42名異常なし」の報告
やって自衛隊体操をしてから革靴で2.2kmのマラソン、それから海自式腕立て
伏せ40回、前支え20分、腕を前に延ばして手を開いて握っての握力1000回、洗
顔、掃除、朝食、掃除、国旗掲揚、課業整列、午前中の体育でまたマラソンや
って(1日合計8km位走る)最後に海自式腕立て伏せ40回、前支え20分、握力
1000回、着替え、掃除、昼食、昼休み実質30分、掃除、午後の課業整列、午後
の体育でマラソンかカッターか水泳か行進訓練かM1小銃持って行進訓練か射
撃訓練とか手旗訓練などいろいろやって、終了時にまた海自式腕立て伏せ40回、
前支え20分、握力1000回、たま〜に座学。終わって掃除、風呂、夕食、わずか
な自由時間に洗濯、アイロン、裁縫やって、掃除、強制自習、掃除、21時15分
に巡検(掃除点検)やっと自由時間(一日の唯一の自由時間は35分だけ)22時
消灯。という生活が4ヶ月半連続で続く。


教育隊ではパラノイアのように同じ場所を何回も掃除します、便器は自分が安
心して舐めれるぐらいきれいにするのが基本なので、掃除点検で班長に「便器
を舐めてみろ」って言われて躊躇すると「やりなおーし!」掃除に自信があっ
て本気で便器を舐めようとすると舐める寸前で「よぉーし!」自信が無いのに
嘘ついて舐めようとすると「待て、やりなおーし!」と必ず班長にばれます。


私も意地っ張りだから、便器を舐める寸前に、班長が「よぉーし!」って言っ
てるのに、意地になって便器を1回舐めた事があります。自分の掃除に完全に
自信があれば便器を舐めても何て事はないですね。でも、班長が「よし!」っ
て言ってるのに、その命令を私が完全に無視したって偉い勢いで怒られたけど
ね(苦笑)




入隊して1ヶ月目は肉体的に、入隊3ヶ月目は精神的に一番しんどい時期です。
このくそ忙しい毎日が4ヶ月半続いた後は、横須賀にある第2術科学校の初級
機関課程で機械の勉強を2ヶ月半やって、その後は護衛艦あやせに乗り組み、
2等海士(奴隷時代)を丸1年やって、計1年6ヶ月強でやっと一等海士にな
れます。そして1等海士(半人前時代)を6ヶ月やって、入隊後2年目でやっ
と海士長(人間)になれます。




1等海士(20)入隊後1年半
1年半の長い奴隷時代がやっと終わって1等海士になったばかりの頃
周りにめちゃくちゃ怖い海士長達がいっぱいいて、いつも焦ってました。


この時期は、私を1年間指導してくれた教育係の海士長が3年満期で辞めた後
で、マジでほっとしている頃です。その受け持ち海士長は、高校を出てすぐに
海上自衛隊に入った人で、当時19歳の私より2期上の21歳でしたが、なに
しろ変わった性格の人で、自衛隊では給料分以上は働く必要がないからって、
自衛隊で楽して生活するために、仕事をサボるコツを私に教えようとする人で
した。


ところが19歳にして既に4年の社会人経験のある私は、そういうのが絶対に
嫌な性格で、上司に気を遣いながら仕事をサボって怒られるより、何も考えな
いで一生懸命働いていた方が、ぐだぐだ言われないぶんよっぽど気が楽って思
うタイプなので、班長の指示で受け持ち海士長と2人で仕事をしていて、「め
んどくさいから仕事をサボろう」という受け持ち海士長のお誘いを無視して勝
手に働くと、後で必ずいびられてしまうし、そうかといって海士長のお誘いに
乗って仕事をサボると、後で班長に「ゆーじ!お前は何をやっとるのか!ばか
もーんっ!」って怒られてしまう板挟みの生活でした。


「お前そんなに働きたいの? お前は本当に変わった奴だな。じゃぁ、仕事や
るから俺から言われたことちゃんとやれよな」「はい、わかりました、やりま
す」「あのな、第2機械室(私の職場)の船底の配管あるだろ」「はい」「そ
の配管の、海水と清水と潤滑油と燃料と空気の配管を3日以内に全部調べて、
図に書いて俺に出せ」「えーっ!簡単に言うけどめちゃくちゃいっぱいあるじ
ゃないですか!3日じゃ絶対に出来ないっすよ。最低でも1週間はかかります
っ!それにそんなの仕事なんですかぁ?」「お前、仕事したいって言ったろ、
俺はお前に休むこと教えて、自衛隊で楽するコツを教えてるのに、お前はどう
しても働きたいって言うから仕事やったんだからな、3日以内に図面に書いて
出さないと絶対に許さないからな。それとも俺と一緒にサボるか?」「やりま
す!やりますけど、アスロック冷却器(潜水艦攻撃兵器の一部)はやらなくて
いいですよね、あれは1分隊の受け持ちですから、俺らには関係ない機械です
からね」「おー、あれはいいぞ、あれはパスしろ」


徹夜で配管を調べてる途中で、同期の2等海士が不思議に思って見に来て、
「お前、何やってんの?」「○○士長の宿題だよ。第2機械室の船底の配管を
全部調べろってさ、まいっちゃうよ」「お前大変だなぁ。俺はそんなこと一度
も言われたこと無いぜ」「えーっ、じゃぁこの仕事俺だけぇ?」「だろ、俺は
今まで☆☆士長にそんなことは一度も言われたことないぜ、お前の受け持ち士
長は変わり者で有名だからなぁ」「いいよなぁ、お前は、お前の☆☆士長はち
ゃんと仕事を教えてくれるもんなぁ、俺の○○士長はサボる話しばっかりだぜ」
「ま、それも自衛隊の運不運って奴だな。それよりお前、顔真っ黒だぜ、後で
顔を洗った方がいいぜ。じゃ、ご苦労さん!お前は一人で船底掃除頑張って!
俺は居住区でのんびり休んでるからよ」「・・・・・・・・・・・」


3日後


「○○士長、まだ80%しか出来てません。徹夜でやったけどこれしか出来ま
せんでした。どうもすみません!」「なんだ、お前ホントにやったの?俺は冗
談で言ったんだぜ、いつ俺に詫びを入れに来るかと思って待ってたんだぜ、お
前、本当にかわいくない奴だなぁ」「・・・・・・」「じゃぁ今度は、この機
械を調べろ、これ、なんて言う部品だ?」「塞止弁ですか?」「へーそう言う
んだこの部品」「え、違うんですか!2術校(学校)でそう教わりました!」
「知らねー、俺も知らないからお前に聞いているんだよ。この部品の構造を俺
の代わりに3日以内に調べておけ」「・・・・・・・」「嫌なら調べるのやめ
ていいぞ、そしてこれから毎日俺と一緒に仕事サボるぞ」「やります!意地で
もやります!」「ったく!お前は本当にかわいくない奴だなぁ、だから俺はお
前のことが嫌いなんだよ。なんでお前は俺の言うこと聞かないんだ? 俺が仕
事で楽をしようって言ってるんだから、お前も俺と一緒に仕事をサボって楽を
すればいいのに」「・・・・・・・」


無言の意味:『・・・ったく、高校卒業してから自衛隊に一直線で入った世間
知らずの21歳はこれだからなぁ、俺は19歳でも既に4年の社会人経験があ
るんだから、そんな甘い考え方が世の中通用するわけがないのを知ってるし、
そんな舐めた考え方が世の中に通用するんなら誰も苦労しないぜ』って思って
るけど、そんなことは絶対に言えません。言ったら殺されます。


「あ、そうだ。そのやりかけの図面な、全部調べて完成したら俺の所に持って
来い。俺も今まで1回も船底の配管を調べたことが無いからそれに興味がある。
もし使えたら俺もその図面使うからな、いいな?」「・・・・・・」「何だよ、
何か俺に文句があるのか?文句があるならあるでいいぞ、俺はこれからお前に
何も教えないからな」「・・・・何もないです」「じゃあ今すぐ作業にかかれ」
「・・・・はぁ・・・かかります・・・・」


横須賀教育隊と第2術科学校を出た後の護衛艦あやせに乗艦した2等海士時代
の丸1年はこんな感じで、毎日毎日サボりたがりで世間知らずの受け持ち海士
長にいびられて過ごし、精神的にだいぶ鍛えられました(^^)



2等海士の時代は理不尽な時代ですから、艦船勤務の最初の1年はこんな毎日
でした。でも、苦労はしておくもんですね、この苦労のおかげで、後で自分が
機関長になる時に、この経験が全部役に立ちました。




こうして入隊後1年6ヶ月で、一等海士になれました。(1士になるのに1年
6ヶ月かかったのは10月に入隊したからです。4月の入隊ならわずか1年で
1士になれます。これは定期昇進が4月に行われるお役所の人事ってやつです)

普通はこの後、1等海士を6ヶ月やって、入隊後2年で海士長になれるんです
が・・・・・私の場合は1等海士の時に下宿で寝坊して遅刻してしまい、出航
する艦に乗り遅れてしまって、「後発航期」という旧日本海軍なら海軍刑務所
行きの大罪をやってしまい(減俸1ヶ月、30分の1の処罰)海士長になるの
が3ヶ月も遅れてしまいました。(おかげで満期金も大幅カット)「後発航期」
のせいで海士長に昇進するのが遅れた3ヶ月間はめちゃくちゃ長かったです。







海士長(21)入隊後2年半

この海士長1人だけ態度でかいっす。完全に開き直った自衛隊生活をしている
のがよくわかります。この時期になるともう怖い物は何もありませんから上官
の言うことも聞きません。いつも制帽をあみだにかぶって突っ張ってました。
下の集合写真の拡大。



解説:私の立っている場所は撮影の時に一番目立つ、最高の場所ですから、
   後ろから顔を出している3等海曹に場所なんか絶対に譲りません。
   彼は最初私の右横に無理に入って来て、「お前はもっと場所を空けろ」
   と暗黙に要求してきたんですが、私が意地でもスペースを譲らなかった
   ので、あきらめて降りちゃいました。





入隊後2年半の海士長の頃 最後列右端
総員135人前後、仕事中の隊員を除く90人位の記念写真










受け持ちの2士を持った頃

海士長だったある日、班長から、「おい、今度入った2等海士だがな、◇◇と
△△はお前が面倒を見ろ」「へ? 一度に2人もですか?」「そうだ、いろい
ろと配置があってそうなった、いろいろ教えてやってくれ、頼むぞ」「はぁ」


「ゆーじ士長!◇◇2士です!」「△△2士です!よろしくおねがいします!」
「はいはい、よろしくねー。2人ともどこから出てきたの?」と出身地につい
て無駄話した後、「ゆーじ士長って怖い人だって聞きましたが、優しいんです
ね」「誰がそんなこと言った?」「えーと、なんとか3曹です」「そうかなぁ?
おれ、あんまり怖くないぜ、階級気にせず友達づきあいする方だから、どっち
かって言うとあんまり下に示しがつく方じゃないと思うけどなぁ」「・・・・」
「あ、俺がそう言ってもお前らは返事は出来ないよな、わりいわりい。まぁ、
俺は他の奴に比べて仕事の要求厳しいほうだけど気楽にやろうや」「はい、よ
ろしくお願いします」


「そんでな、先に言っとくけど、お前ら2術校でちゃんと勉強してきた?」
「はい!」「今すぐスパナ持って仕事したい?」「はい!」「仕事したくてう
ずうずしちゃってる?」「はい!」「そか、お前達ががっかりしないように先
に言っとくけど、お前ら、これから半年はスパナを持たせないからな」「えーっ!
何でですかぁ!」


「それはな、お前らがどんな芋なのか、俺達が全然わからないからなんだよ」
「俺達芋ですか」「そ、俺も芋だしお前達も芋、で、その芋がどのくらいの技
術を持っているのか俺は全然知らないし、お前らも自分の技術のレベルを全然
わかってないだろ?」「はぁ」「で、俺がそのよくわからない芋達に仕事を任
せて、機械を壊したらどうなると思う?」「さぁ?」「艦が止まっちゃうんだ
よ。いざって時に戦争出来なくなっちゃうの、意味わかる?」「はい」


「だからお前達は最初は先輩の仕事を見てるだけだからな。そして、ある日突
然、俺達の気が向いた時にお前達に仕事を任す。それが俺達のやり方、その時
にお前らが仕事が出来なかったらどうなると思う?」「殴られるんですか?」


「ばーか、そんなことするわけないだろう、2度とお前らに仕事を任せないだ
けだよ」「はぁ・・・」「だからこれから半年、お前達は見てるだけだけど、
いつも気合い入れて先輩の仕事を見て、先輩の仕事を目で盗め。そして、いつ
でも自分がその作業をするつもりで見てて、突然仕事を任されたらスムーズに
仕事を引き継げる心構えで仕事を見てろ、わかったな」「はい!」「俺達はお
前達が見学してる態度も見て仕事を任せれるかどうかを判断してるんだからな。
お前達が1日でも早くスパナ持ちたかったら、作業中は絶対に気を抜くなよ」
「わかりました!」


「よーし、じゃあお前ら、このフランジばらして見ろ」「えっ!でもたった今、
ゆーじ士長は俺達に半年はスパナ持たせないって・・・・」「大事な機械はな。
でも、こんなの馬鹿でもばらせるだろ。この2本のパイプのフランジのパッキ
ン交換するからな。見本にまず俺がこっちを先にやる。俺がよくやることを見
てろよ。そしたら次にお前らはこっちをやれ。やって駄目ならすぐに俺が代わ
る。そして代わったら俺を見学してろ。俺のやる作業の段取り忘れるなよ」
「はい!」


まず私が10分で作業終了してから、2人が作業開始、もう危なっかしくて見
てらんない、我慢して我慢して15分後「お前達、術科学校で習ったテクニッ
クを全部使ってそんなもんなのか?」「はぁ、でもこういうのやったことがな
いですから難しいです」「だけどお前ら、この作業は機関場の作業の基礎の基
礎だぞ、よし、お前ら時間切れ。俺と代われ。よく見てな、こうすれば簡単だ
からな」と5分で作業終了


「ゆーじ士長上手いですねぇ」「ばーか、俺が上手いんじゃないの、お前らが
下手過ぎるの。さっき俺の言った意味がわかったろ。お前らはやる気はあって
も技術が全然ないの。術科学校で習ったのは基礎の基礎だけ、習った通りの機
械はどこにも無いし、習ったのと同じ作業もどこにも無いの。機関科は応用が
できない奴は仕事が出来ない奴だってことをお前らに教えるためにわざと仕事
をやらせたの。俺の言ってる意味わかった?」「はい!」


「よし、お前らに最初の仕事をやらせるからな、頑張れよ」「はい」「これな、
俺が2等海士の時に先輩の士長に書けって言われて書いて、今はみんなが使っ
てるここの機械室の配管図だけどな、お前らに2週間やる、2週間でこれと同
じ物を作れ。そうするとここの機械室にどんな機械があってどこにつながって
いるのかが完全に理解できるからな。パイプの中にはネズミが住んでるわけじ
ゃないし、機械は妖精が動かしてるわけじゃないのがよくわかるからな、」
「はい!わかりました!」


「いいか、これは俺のために書くんじゃないんだからな、お前達が自分のため
に書くんだからな、手を抜いて書いてもいいし、精密に書いてもいいぞ、合格
点はないからな。自分の役に立つと思ったら2週間過ぎてもいいから真剣に書
いておいた方がこれからのお前達のためだぞ、わかったな!」「はいっ!」
「よし、じゃぁお前ら作業にかかれ」「かかります!」


先輩たちを反面教師にしてこんな感じで若い衆に仕事を教えていました。私が
2等海士の時には、誰も私にこういうふうに優しく仕事を教えてくれないんだ
よなぁ(苦笑)


この後、この2人が誰よりも早くスパナを持って仕事をしたって聞いた2等海
士連中がうらやましがって、配置によって運命が変わる自衛隊の運不運を嘆い
たのは言うまでもありません。それが海上自衛隊



 やって見せて
 言って聞かせて
 やらせてみて
 誉めてやらねば人は動かず

 ・旧日本海軍、連合艦隊司令長官 山本五十六




この作業終了後、私が班長(2等海曹)に作業が終了したことを報告。
「班長、クレイトン・ボイラの雑用蒸気パイプのフランジパッキンの交換作業
終了しました」「ばかもん!」「はぁ?なんでですか?」「お前、この作業に
何分かかっとる!この作業なら20分で終わるはずだ!30分もかかるとは何
事だ!」「だって班長!俺は作業開始前に仕事の段取りを班長にちゃんと説明
したじゃないすか!新人の2等海士2人に仕事を体験させるために一番簡単な
フランジパッキンの交換作業やらせるから普段より少し余計に時間がかかるっ
て!班長納得して了解したじゃないすか!」「うるさいっ!お前は言い訳をす
るな!お前の仕事が遅かったことには変わりがない!このばかもん!」「うー
・・・わかりました!仕事遅れてどうもすみませんでした!」「おう!わかれ
ばいいんだ!わかれば!このバカが!」「・・・」「まだ俺に何か文句あるの
か?」「何もありません!」「よし、次はこの作業をやれ」「わかりました」
えーくそ!なんで自衛隊って俺に気持ちよく仕事さしてくれないかなぁ・・・
これも海上自衛隊


 苦しいこともあるだろう
 言いたいこともあるだろう
 不満なこともあるだろう
 腹の立つこともあるだろう
 泣きたいこともあるだろう
 これらをじっとこらえてゆくのが男の修行である


 ・旧日本海軍、連合艦隊司令長官 山本五十六



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海士長の頃の日常、正攻法でギンバエするとき。

食べ物は4分隊の経理補給が全て管理していますので、食事時間以外に、何か
食べたいと思っても絶対に食べられません。4分隊の誰かに「何か食べ物ちょ
うだい」って言うと、「何か食いたきゃメシの時間まで我慢しろっ!この艦に
はメシの時間以外にお前に食わせる物は何も無いっ!」って怒鳴りつけられま
すので、そこをなんとかして食い物を手に入れるのを、ギンバエ(銀蠅)と言
います。


艦内の食事はボイラーの蒸気の熱で調理するんですが、私の仕事が補助ボイ
ラーの整備の受け持ちでしたので、たまに珍しい食い物があると、4分隊の
飯炊きの海士長を脅し上げてました。


「あのよ、俺最近、ボイラーのノズル整備を全然やってないんだよなぁ・・・
明日の朝、お前朝飯当番だろ、もしかしたら明日の朝、朝メシ炊いてる途中で
ボイラーが失火してメシが堅くなったらごめんなー」「おいっ! 頼むよ! 
蒸気が止まると俺が上に怒られちゃうんだからよ! 今すぐちゃんとボイラー
整備してくれよ!」「んー、でもこれがけっこうめんどくさくってなー、手が
汚れるしなぁ、・・・・・よかったら自分でやってみる?」「ばかやろーっ!
俺にそんな事出来るわけがないじゃねえか! てめぇいったい俺に何が言いた
いんだ! もったいぶらずに早く言え!」この時、海士長の持つ牛刀の切っ先
は私の心臓から20cmの距離。


「ほら、お前包丁危ないって、そのポーズだと俺刺されちゃうじゃん・・・」
「あ・・・」「そんなら話が早いや、言っていいんなら言うけどよ、そう言え
ばこの間新しいフルーツ出たろ? あれもしかして余ってる?」「わかった、
わかったから!お前になんでも好きなだけやるから! 頼むから蒸気止めない
でくれよ! お前、少しは俺の立場も考えてくれよな!」「おー、そうか悪い
なぁ、じゃぁ今日の深夜ワッチでちゃんとボイラー整備しておくからよ。その
時に自分におつかれさんでフルーツ食うからよ、冷蔵庫の鍵の隠してある場所
を教えてくれる?」「わかったから! お前の好きなだけなんでも食っていい
から! 鍵は冷凍機のスイッチボックスの中にちゃんと隠しておくから! た
のむよー! お前がちゃんと仕事してくれないと俺が上に殺されるんだからな! 
絶対蒸気止めないでくれよな!」「わかったわかった、ちゃんとボイラーの整
備やっとくからよ、じゃなー」


ちなみにボイラーのノズル整備はたったの20分で終わります。
海士長になると毎日がこんな感じで楽しい時代でした(^^)

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あと2週間で海上自衛隊を3年満期でやめる頃、22歳、後部居住区にて撮影。


この時期は「神様士長」と呼ばれる時期で、イエス・キリストが死んで3日後
に復活したように、3年辛抱した隊員が娑婆に復活するからそう呼ばれる。

・・・・んじゃなくて、この時期に私がトラブルを起こすと、私は辞めていく
から全然関係ないけど、残された人たちは自分の昇進にかかわるくらい迷惑な
話なので、「とにかくお前は何もしなくていいから、自衛隊を辞める日まで絶
対に問題だけは起こしてくれるな」って周りが腫れ物に触るような扱いをする、
ありがたい神様のような存在だから。 





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こんなふざけた海上自衛隊生活を送っていましたが、私はとにかく人にぐだぐ
だ言われるのが大ッ嫌いな性格なので、仕事だけは誰にも文句を言われないよ
うにしっかりやっていましたので、何故か上は私を評価してくれたみたいで、
人事課から遠洋航海(世界一周)参加のために、練習艦隊への転勤の内定が
一番で来ました。


ところが機関長も私の性格をしっかり読んでいて、3年満期まであと3ヶ月と
いうある日、機関長室に呼び出され、「お前は絶対に自衛隊を辞めるな」とい
う長時間の説得にも言うことを聞かず、私が絶対に何がなんでも3年満期で海
上自衛隊を辞めるのを確認した後。


「そうか、俺がこれだけ止めてもお前は自衛隊を辞めるのか、残念だな・・・
実はな、人事課からお前に遠航の内定が来てるんだよ。確か今年は世界一周だ
ったな、だが自衛隊を辞めるお前には必要ないな、うちの艦ではお前が一番最
初に人事課から内定が来たんだが、お前には必要ないからこれは次の○○に回
す」


「き! きっ! きかんちょぉぉぉぉ! 俺っ! 俺、自衛隊辞めるの辞めま
す! 遠航行かせて下さいっ! お願いしますっ!そんなチャンス一生に一回
しかないじゃ無いですかっ! お願いします! 自衛隊辞めるの辞めますから
俺を世界一周に行かせて下さいっ!」


「アホ、だからさっき俺があれほど自衛隊を辞めるなって説得したじゃないか。
もう遅いっ! やる気の無い奴は俺が絶対に遠航には行かせん! お前は帰っ
てよし!」「・・・・はぁ・・・・ゆーじ士長帰ります・・・」


そして10日後、通路でばったり機関長と2人きりで会った時に


「ゆーじ、あのな、今度はお前に南極観測船「ふじ」の内定が来たんだけどな、
お前だけは絶対に行かせんからな!わかっとるな!」「・・・・はぁ・・・・
よくわかってます・・・」


そして機関長が行っちゃってから


「くそーっ!俺はなんでこう世渡りが下手なんだ! どうしてこうなんでもか
んでも正直に言っちゃわないと気が済まない性格なんだ!南極行ってペンギン
と肩組んで記念写真撮るのが夢だったのに! くそーっ!」と、おもわず泡沫
式大型消化器を蹴っ飛ばすと、「あ、てめ! 今の俺見てたなコノヤロ! 
あっちいけ! あっち行かないと殴るぞコラッ! しっしっ!」











ゆーじ
2002/03/24


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