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     【海上自衛隊の「整列」の話】





これはムチの話のついでになります。


会衆内のお局姉妹や小姑姉妹達のプレッシャーに負けてムチした(された)人
もいると思いますが、私も海上自衛隊時代に小姑下士官から似たような事を強
制された経験をしてますのでちょっと与太話をします。これはムチの話を書い
ていて、話を脱線して書いていたら複線できなくなっちゃって一本出来ちゃっ
たけど、結局、没原稿になってしまった部分です。


明治時代から終戦までの旧日本海軍では、いくさに強い兵を作るために、上級
兵による下級兵に対する私的制裁はおおっぴらに黙認されていて、下級兵が団
体責任でムチをされる事を【整列】と呼んでいました。


【整列】では、顔を拳骨で殴るのをビンタ、尻にムチをするのはバッタと呼ば
れていて、海軍精神注入棒と呼ばれるムチで行われていました。
(もちろんパンツは下げません、作業ズボンの上からです)


これは明治時代の日本海軍が帆船時代末期のイギリス海軍から技術を導入した
時に一緒に取り入れられたもので、イギリス海軍の下士官達が水兵達に気合い
を入れる目的で伝統的に使われていたムチの日本版です。


ちなみに帆船時代のイギリス海軍ではハンドスパイキ(木製の円錐形の棒)や
短いロープの切れ端で、ぼやぼやしている水兵の尻を叩きました。また。水兵
が上官に反抗したときは、被告の両手両足を縛り付けて、九尾の猫鞭と言うム
チで背中を5〜20回位叩き、背中に一生消えない傷を残して他の水兵たちへ
の見せしめとしますし、罪が重い場合は艦隊引き回しの刑として死ぬまで叩き
ました。(詳しくはホーンブロアーとかの帆船小説を読んでみて)


そして、一度導入したら国内事情に合わせて変化させて取り入れるのは日本の
お家芸ですから、イギリス海軍のムチ、スターターはバッタと名前を変えて、
海軍精神注入棒と名付けられたムチで下級兵の尻を叩きます。ムチの種類は、
野球のバット、内絃マッチと呼ばれる掃除用のモップの柄、クランジパイプ
(消火用ホースの筒先や鉄パイプ)、ホーサーと言う直径60mm以上のロープ、
給食用に使う長さ1m50cm位の巨大しゃもじなどを使い、整列時に日常的に使わ
れていました。


さて、旧日本海軍の伝統を強く受け継ぐ海上自衛隊では、旧日本海軍の下士官
が中心になって行っていた私的制裁行為【整列】の反省から、暴力による私的
制裁は絶対に禁止されていて、艦船部隊では、護衛艦に乗り組み中に、気合い
を入れて仕事をしないで、ぼやぼやしている下級者(2等海士、1等海士)に
気合いを入れるために行われる伝統的な罰直(私的制裁)があります。



それを【整列】と言います(笑)


下級兵が気合いを入れないでもたもたしていると整列がかかり、上級者(3等
海曹、海士長)の説教を聞く時に、革靴を履いたまま長時間正座し続ける「正
座」と、説教が終わった後に必ず行われる、1応復20秒が目安の超スローモ
ーションで行う、海自式「腕立て伏せ」20回か、腕立て伏せの腕を伸ばした
まま30分以上保持する「前支え」のみ黙認です。(航空部隊では、足を椅子
の上に乗せて海自式腕立て伏せを20回行う「急降下爆撃」)


そして、もし殴ったのがばれると、通常の刑法で裁かれるし、
最悪の場合は懲戒免職になります。



私は護衛艦の機関の運転と整備をする機関員で内燃という種類の仕事で、内燃
機関(ディーゼルエンジン)の整備をする仕事でしたので、第3分隊というグ
ループに入っています。


3分隊の整列のやり方は、
「3分隊海士集合、操縦室!」なら通常の仕事上の集合命令で、
「3分隊海士整列、操縦室!」なら説教を聞かされるはめになります。


そして3等海曹の監視の元、古手の海士長が「この間、これこれこういう事が
あった。 お前ら最近たるんでるぞ! てめーら全員自衛隊を舐めてんのか!
全員正座ぁ!」の号令で、新人海士長と2等海士と1等海士が靴を履いたまま
床に正座して、5人ぐらいの新人3等海曹と古手の海士長から延々とお説教を
聞かされるんですが、この時に許される返事は、大声で「はいっ!」「すいま
せんでしたっ!」「わかりましたっ!」「これから頑張りますっ!」だけで、
整列中に上級者を舐めた態度を取っていると、激高した上級者に頭をひっぱた
かれます(笑)


そして説教が終わってから、自衛官の体力育成という名目の腕立て伏せになり、
1応復20秒が目安の超スローモーションで行うやりかたの、海上自衛隊独特
「腕立て伏せ」を20回ワンセットとして、1セットから5セットくらいして、
最後にもう一回説教があってから解散になります。


(試しに海自式腕立て伏せを20回やってみて。腕を下げた時は胸と腰が床に
付くぎりぎりまでです。そして腕を延ばした時も下げたときも体は一直線です。
姿勢が悪いと班長にケツを蹴られてしまいます(笑)腕をちゃんと下げて10
秒保持、腕をしっかり延ばして10秒保持の計20秒で1カウントになります。
これを20回やって1セットです。ちょっとやってみて、たったの1セットで
汗が出るよ。初めてこれをやって2セット出来たらあなたはたいしたもんです(^^)


私も入隊2年目の21歳を過ぎて、兵隊の一番上の階級である海士長になって
からは下級者に整列をかけなくちゃならない立場になりました。だけど、これ
がどうにも嫌なんだよね。整列は最初に小姑タイプの下士官があからさまに嫌
味を言ってくるのから始まるんですよ。


「お前ら内燃の若い衆は最近たるんでるぞ、もっとしっかり若い衆に気合いを
入れて仕事をさせなきゃ駄目じゃないか、最近整列やってないだろ。」って言
うんですが、


小姑海曹がこういうことを言った場合は『お前が下級者に整列をかけて説教を
しろ、もしお前が説教をするのが嫌なら、俺達若手の3等海曹が説教をするぞ、
その時は海士長も含めて全員説教だから、お前も正座して腕立て伏せだぞ』っ
て意味なんですよ。


で、もしそんな事をされたら、艦内での私の立場は完全になくなってしまって、
機関科の海士長全員に恨まれて、それからの私は毎日毎日針のむしろの生活を
しなきゃならんないんですよ。それが嫌だから他の海士長達はすぐに「整列!」
の号令をかけるんですが、私はなんでもかんでも団体責任で整列をかけて説教
する海上自衛隊のやりかたがとにかく嫌なんですよね。


これって、昔会衆内で口うるさいお局姉妹や小姑姉妹達のムチのプレッシャー
にあっさり負けてしまった母親が子供にムチをするのをしょっちゅう見てたの
と話の流れがなんとなく似てるから、感情的にどうにもやりたくないんですよ。
(小姑下士官=小姑姉妹、海士長=母親、2等海士=2世の子供)


んで、その問題がある2等海士は2人(18歳)なんですが、乗艦6ヶ月目位
で、艦に慣れて来たのと、やる気がなくなって集中力が低下して来る時期で、
2等海士の5月病みたいなもんで、誰でもかかる病気の時期なんですよ。でも、
この時期に、ぼけーっとして危険な環境で仕事していると、安全に対する注意
不足で本人が怪我する可能性があるから危険な時期でもあるわけです。


そして、海上自衛隊では2等海士とは人にあらず、使い物にならないじゃまな
ゴミにしか過ぎなくて、犬とか奴隷とか借金で縛られた使用人みたいなもんで、
すから、人間としての人格なんか一切認めてくれません。だから上級者のスト
レス解消に暴言を聞かされてプライドを傷つけられたりするんですが(例えば、
恋人からラブレターが来たら全員の前で大声で朗読しろと要求されるとかね)


海上自衛隊とは、みんなこう言う苦労する時期を経験して順番に階級が上がっ
て行くシステムになってるから、娑婆で仕事もしないでぷらぷらしている時に、
見知らぬおじさんに「きみ、仕事何してるの? 腹が減ってるならカツ丼でも
食べるかい?」って言われて、その優しい言葉につい釣られてしまい、地連の
おっさん(自衛隊地方連絡事務所の広報官)にだまされて、教育隊の門をくぐ
ってから、1等海士になるまでの1年半は、とにかく自分に気合いを入れて仕
事して、何がなんでも我慢してこの時期を過ぎなきゃならないんですよ。



(最近は、若者を釣るのにカツ丼は流行らないそうです、私の場合は満期で辞
めてから職安でふらふらしている時に、地連のおっさんに、「海上を満期で終
わったんなら今度は陸上はどう? 陸上も楽しいよ」って言われて、ヤクルト
飲ませてもらったけどね(苦笑)


そして、こうやって下から苦労して階級が上がって来た古参兵達は、今まで入
隊してから飲んできたみそ汁の数で全てを評価します。こういうのは旧日本海
軍からの伝統です。


本当はこの時期の2等海士達は、上級者が声をかける前にその目的を察せれる
くらい四六時中カンを鋭くしていなきゃならないんですが、この2人は入隊前
に想像していた海上自衛隊の世界と実際の海上自衛隊の世界の現実のギャップ
にめげてしまったわけです。で、私もそういう時期があったから、彼らの気持
ちや事情がわかるし、それで団体責任じゃ、どう考えても「俺」が納得できな
いよなぁって思っていましたので一計を案じました。





私が乗っていた DE216 護衛艦あやせ(既に廃艦)で生活していた後部居住区
は、地下2階にあって水面下になるんですが、3段ベットがずらりと並んでい
て45人位住んでいます。事前に2人が在室なのを確認して、他の分隊の隊員
全員がいる時を見計らって、わざと靴音を立てて鉄の急な階段をかけ下りて行
き、何事かとみんなが注目するようにしてから、おもむろに「おいっ! ○○
2士と○○2士っ! 話があるからちょっと顔を貸せっ! 場所は非常発電機
室っ! 駆け足っ! もたもたすんなぁ!」って大声で怒鳴りあげました。


すると私に整列させろと言った小姑の下士官はしてやったりとにっこり笑うし、
海士長連中は事情を全然知らないから、普段怒ったことがない私が怒るんだか
ら何事だって見るし、同室だった武器を受け持つ1分隊の連中は、「なんだな
んだ、何事だぁ!」って興味丸出しで飛び出してくるし、呼び出された2人は、
自分が何で怒られるのか良く知ってるから真っ青な顔になって飛び出してきま
す。彼らが出てきたのを確認した私は階段を駆け上がり、非常発電機室に行き
ました。


で、非常発電機室に入って待っていると、10秒も待たないうちに1等海士と
2等海士全員が10人位団子になって走って来て、非常発電気室前に集合する
んで、「バカヤローっ! 誰がお前らを呼んだっ! 俺が呼んだのは2人だけ
だっ!お前らには用は無いっ!今すぐ帰れっ!」って怒鳴り上げると、青い顔
をして2人だけが中に入ってきて、いきなり「すいませんっ!」って大声出し
て、頭を下げて私に謝るわけです。


私が、「うるせえーっ! それじゃぁ話ができないだろうがっ! おいっ!そ
このお前っ! お前だお前っ! 入り口のドアぁ閉めろぉ!」って大声で怒鳴
りあげて外の奴に出入り口の鉄製のドアを閉めさせました。


2人はもう完全に私に殴られると思ってますから、真っ青になって震え上がっ
て「ゆーじ士長!すいませんっ!気合い入れてないですいませんでしたぁ!」
って土下座しそうな勢いで謝るから。


私は口調を変えて普段のしゃべり方で、「いーから、俺はお前達を殴るために
呼んだんじゃないんだからまず落ち着け。落ち着いて俺の話をよーく聞け。あ
のな、お前ら最近仕事に全然気合いが入ってねーだろ。お前ら自衛隊やめたい
のか?」って聞くと、いきなり目に涙を浮かべて「やめたくありません!」っ
て割れるような大声で言うんで。


「あのな、お前ら、人の話ちゃんと聞いてる? 俺はお前らを殴るために呼ん
だんじゃ無くて、話をするために呼んだんだから落ち着けって言ってんだよ。
落ち着いて俺の話を聞く気がないんなら本当にお前らを殴るぞ!」って言って
も「はい!」って大声の返事しかしないから、「だーかーらー お前ら普通に
喋れや。そんなに大声出すと外に話が聞こえるだろ。大声出し続けて俺に殴ら
れたいのか? そんなに殴って欲しいんなら殴ってもいいぞ」って言うと、少
し声が小さくなって「はい!」って言うだけで緊張してて全然落ち着かないか
ら、


「しょーがねーなぁ、お前らタバコすう?」って自分のタバコを出してやると、
想定外の意外な展開に「・・・・・・」って態度で硬直してるから、私がまた
普通の声で「俺がタバコ吸うか?ってお前らに聞いてんだよっ! お前ら18
歳でも今までに何回もタバコ吸った事あんだろうが。俺がタバコを吸うか?っ
てお前らに聞いたんだから、お前らはありがたく俺のタバコを吸えや。もしか
してお前ら、俺のタバコを吸いたくないって言うんじゃねーだろーな? それ
ならそれで俺にも考えがあるぞ!」って話を持って行きました。


ちなみに、こういうのが当時の海上自衛隊の20歳以上の海士長クラスが18
歳の2等海士に説教する時の典型的な話の進め方です。話しむちゃくちゃです
が、これが当時の海士長の常識であり、ちゃんと話に筋が通っています。


そして私も、2等海士(19)の時に当時の海士長にこれを思いっきりやられて
泣きそうになりました(^^)


一人はタバコ初体験でしたが2人に無理矢理タバコ吸わせて、2人の心が落ち
着いて来たところで、私が昔、海士長に教わったとおりの説教じゃなくて、私
なりのやりかたで、今、自分たちが置かれている状況を説明してやりました。


私が小姑下士官に整列をかけるように言われたその理由。そして私は整列が嫌
いだから絶対に整列をかける気がないこと。そうすると次には小姑下士官連中
が海士全員に整列をかけるから、海士長も全員整列させられて、その恨みは我
々3人に直接来ること。私は海士長だからそういう状況になっても逃げ道はい
っぱいあるけど、2等海士の2人には逃げ道がどこにも無いから、あと1年数
ヶ月経って海士長に昇進するまで、2人にとって毎日が地獄の生活になること。


それが嫌なら気合いを入れて仕事しろ、それも嫌なら地獄の生活を3人で楽し
もう。でも俺はそんな生活は嫌だから、お前らのことなんか気にしないで先に
逃げちゃうからなって説明して、自分の置かれた今の状況を完全に自覚させた
ところで、


次に、なんで海上自衛隊では気合いを入れて仕事をしなければならないかと言
うことを教えて、危険な仕事を毎日してるんだから、気合いを入れて神経を研
ぎ澄ませて常に注意深く仕事をしないと、自分が海に落ちたり、機械に腕を飛
ばされたりして自分の命にかかわること。そして、海上自衛隊では2等海士は
犬や猿や看板と同じで、そこにいるだけでじゃまな使い物にならない目障りな
ゴミな奴らだから周りは一切人間扱いしないけど、お前らが1等海士になった
日からちゃんと半人前の人間扱いになるから、その日のために今からちゃんと
準備しておかないと、今度は1等海士や海士長になってから地獄を見ること。
だから今からしっかり頑張っておかないと、階級が上がったら何でも知ってて
当たり前なんだから、その時に自分が知らないからって人に聞いても、質問の
のレベルが低すぎれば、相手は馬鹿にされたと思うから何も教えてくれなくて、
後で自分が泣きをみるぞって説明したんですが、


彼らの受け持ちの海士長はそう言うことを全然説明しないタイプなんだよね。
ただ「気合いをいれろ!」「ぼやぼやするな!」ばっかりだから2人は完全
にやる気をなくしたんですよ。


で、そういう説明をするのは私にとっては当たり前の事だと思うんだけど、
他の海士長連中は心でそう思っていても言葉にできないんだよね。だから、
「気合いを入れろ!お前ら最近たるんでる!自衛隊舐めてんのか!」ばっか
りで、そんな理由じゃ若い連中は全然納得しなし、そのうちやる気をなくし
ちゃうんですよ。


んで、今回わざと2人を大声で呼び出したのは、整列をかけたくない私が、小
姑海曹に私のやる気を見せるために話をわざと大げさにして呼び出したこと。
そして、この説教の後に小姑海曹に、「説教しました、2人はちゃんと反省し
たみたいですから1週間時間を下さい。1週間たって全然変わってなかったら
海士全員に整列をかけます!」って説明するから、お前らはこれから1ヶ月だ
け死ぬ気で気合いを入れて働け、そして1ヶ月経てばみんな忘れてるからな。
って言うと、


2人とも「3ヶ月でも半年でも気合い入れて頑張ります!」って言うから、


「お前らなぁ、出来もしない約束するより、今、目の前の事だけ考えて生きろ。
お前ら教育隊に入ってから毎日班長に煽られ続けてきて、今日一日の事しか考
えられなかったろ?」「はい」「で、お前らは今になって初めて余裕が出来て、
昨日の事とか明日のことを考える余裕が出てきたわけだ、そうだろ?」「そう
なんです、ゆーじ士長聞いて下さいよ、私はですね・・・」「こら!そこでス
トップ!」「はぁ?」


「いーの、お前らの話を俺が聞いたって聞くだけ無駄なんだよ!」「はぁ・・」
「お前らは自衛隊に入ってから今まで半年以上、自分の頭を何も使って無かっ
たんだよ。俺の言ってる意味わかる? 入隊してから覚えることいっぱいで余
計なこと何も考えられなかったろ?」「はぁ・・・そうかも」「だからお前ら
は半年ぶりに頭を使ってみたら、海上自衛隊の現実に目ざめちゃったから急に
やる気がなくなっちゃったの。それはみんな一緒なの。俺も2士の時はそうだ
ったの」「えーっほんとっすかぁ、ゆーじ士長にやる気が無い時期があったな
んて信じられないっすよぉ」


「・・・・あのね、お前らね、俺のこと火星人かなんかと勘違いしてないか?
俺に殴ってほしい?」「いえ、すみません!そんなことないです!」


「じゃ俺の言うこと聞け、兵隊には誰にもそういうつらい時期があるの。お前
は海上自衛隊に入ったつもりだったのに、いざ入ってみたら、海上自衛隊の中
身は旧日本海軍そのままだからたまげたろ?」「えっ!そうだったんですか!」
「あれ?お前軍事マニアなんだろ?俺より旧日本海軍の事は詳しいんだろ?知
ってて当然と思ってたけどな」「旧日本海軍が海上自衛隊・・・・・」


「お前、整列って意味知ってる?本来なら整列は顔をぶん殴るビンタとかケツ
を海軍精神注入棒でひっぱたくバッタやるんだぜ、上官に欠礼したらビンタ1
発なんだぜ。でも海上自衛隊は暴力禁止だから、代わりに正座と腕立て伏せな
んだよ、中身も一緒、日本人の下士官は世界最強なの、それは過去の戦争で証
明されてるし、アメリカ軍も認めてるんだよ。あのな、日本の下士官兵の強さ
は内務班があるからなんだよ。でな、陸上自衛隊は旧陸軍の内務班を引き継ぐ
のをアメリカ軍に禁止されてわざと弱くされちゃったわけだ。でも海上自衛隊
は旧海軍の内務班をそのまま引き継いでるから旧日本海軍の伝統がいっぱい残
っているわけだ。」

注:内務班を簡単に説明すると、最上級海曹を除く下士官全員と海士の全員が大部屋の一室で
  生活する状態。24時間上司の目が光ってるので気を抜けず、しかも個人のプライバシーが
  一切無いので毎日の生活でストレスがめちゃくちゃ貯まる。例えば2等海士は食事以外に
  椅子に座る権利が無い。テレビを見る権利が無い。上司に笑顔を見せると「男がにやにや
  するな!」と怒られる。しかめっ面をすると「俺に何か文句あるのか!」と怒られる。そ
  うかといって普通の顔をしてると「お前はやる気があるのか!気合いを入れろ気合い!」
  と怒られる。そういう生活に1年半耐えなければならない。(海士長になれば楽が出来る)


「その世界最強の海軍の伝統をしっかり受け継いでいる海上自衛隊の下士官達
が若い海士を指導するんだから、日本人がいくらアメリカ海軍を真似しても結
局中身は旧日本海軍になっちゃうわけ。隊員が日本人である限りそうなるの、
俺の言ってる意味わかる?」「なんとなくわかります」


「そか、お前さっき何か言いかけたろ? お前のその不満は、お前が思ってい
た海上自衛隊と違うから不満なんで、ここが日本海軍だと思うと何故そうなる
のか納得できるんじゃないの?」「・・・・思います。思いますけど、やっぱ
つらいっすよ」


「だけどお前。ちょっと前まで自衛隊生活が毎日楽しいって言ってたじゃん。
俺は海上自衛隊に入隊するのに教育隊の隊門くぐった瞬間から、ここは自分に
合わない世界だから毎日やめたいやめたいって思っているけど、自分に面子が
あるから3年間だけ辛抱している男だから、お前を見ててものすごく珍しい奴
だと思ってたんだぜ、なんでお前、急に考えが変わったんだ?」「あれ?確か
にそうっすねぇ、なんでだろ?」


「だからそれはお前の頭に余裕が出来て、今まで頭が寝ていたぶん、急に考え
出したからなんだよ。お前の中身が無い頭がいきなり物事を考え出すからそう
なるの。だから辛かったら今までみたいに余計な事を一切考えるな。この時期
は誰でも考えれば考えるだけ辛くなる時期なんだからさ、お前らが自分の中身
の無い頭使うのは一等海士になってからにしろ。階級が上がって一等海士にな
った頃には、お前らの置かれている状況が全然変わってるからなんとかなる。
これは理屈じゃない、みんなそうなんだぜ」って私の言ってる意味を理解させ
たので、


じゃぁ俺が先に居住区に行って小姑海曹に説明するから、お前らは少し経って
から出て来いよって言うと、2人が完全に意味を納得してくれたので、わざと
大声で「別れ!」(解散と言う意味)と言って非常発電機室のドアを開けると、
外に15人位いて、そこにいる全員が、私が2人をリンチしていたと思ってい
たみたいでした(苦笑)


外に出ると海士長達が「ゆーじ、お前、あの二人を殴ったんだろ? 正直に言
えや、殴ったんだろ? 貴様、間違いなく懲戒免職だぞ」ってしつこく聞くか
ら、「うるせーな。殴ってねーよ。2人に聞いてみな」って言って居住区に歩
き出すと、そこにいた数員が非常発電機室に飛び込んで入って行き2人に話を
聞きまくっていました。


私は居住区に行って小姑海曹に大声で状況報告、小姑海曹は満足げに「うむ」
とか言っちゃって、自尊心を満足させられてにんまりしていました。そしたら
それを聞いていた1等海士連中の目がつり上がっちゃって、それからしばらく
奴隷と半人前達(2等海士1等海士)はみんな気合いを入れて仕事をするよう
になりました。


そして海士長達に質問された2人は「ゆーじ士長には一発も殴られてません」
って言うんだけど、状況からしてそんな話は誰も信用しなくて、その日のうち
に艦内の135人全員が知り、機関科のゆーじ士長が非常発電機室で2等海士
2人をリンチにかけて殴ったと言う話になってしまいました。


最初は真っ青な顔で入って来た2人が、じきに安心して、私の話を聞いた後は
やる気を出して興奮して真っ赤な顔になって出てきたから、誰が見ても殴られ
たと思うのは当然なんですけどね(^_^;)


そしてこの話が艦内で大問題になってしまい。艦長(2等海佐)まで話が届き、
事情聴取の対象になります。海上自衛隊では私的制裁で暴力使うのは絶対に禁
止ですから、最悪の場合減俸とか懲戒処分になる話しになりました。


私は、機関長(2等海佐)に呼び出されて事情聴取を受けたけど、殴ってない
し、2人も証人がいるんだからやましいことは何もなくて、小姑海曹に整列を
かけるように言われたこと、私は整列をかけるのが絶対に嫌だから2人を非常
発電機室に呼び出して、これから気合いを入れて仕事をするように説教をした
だけで、その後小姑海曹に2人の状況を報告したと正直に言ったんだけど、


機関長が私の話を全然信用しなくて、何回も何回もしつこく確認するから、
「そんなに俺を信用しないなら2人に直接聞いてくださいっ!」って言って、
それでも「本当の事を言え」って言うから、「機関長が俺の話を信用しないな
らそれでいいですっ!ゆーじ士長帰りますっ!」って大声で言って、ドアを思
いっきり叩き付けるように閉めて自分の居住区に帰りました。


そしたら今度は、2等海士の2人は艦長と機関長に事情聴取されるし、小姑海曹
は機関長に呼び出されて、小姑海曹はゆーじ士長に無理に整列を要求したって大
目玉になってしまいました。


その後、機関長にまた呼び出されて、私の無実が証明されたことを聞いたんで
すが、「あれから2人はやる気を出して仕事をし始めたので、お前が2人に対
して教育した内容は見事である」と誉められてにんまりすると、「お前な、未
成年にタバコを吸わせたろ」って言うから、「いけないんですか?どのみちみ
んなタバコ吸いますよ」って言うと、


「馬鹿者!2人のうち1人は生まれて初めてタバコを吸ったんじゃないか!」
「機関長!そこまで聞き出したんすかぁ!」「当たり前だ!お前は海上自衛隊
を何だと思っとる!海上自衛隊では入隊前から吸ってる奴は黙認してるが、未
成年の喫煙は法律で禁止されているんだから、お前のやった事は法律違反だ!
わかっとるのかバカモーンっ!!」「はぁ・・・」「まぁ、今回お前はいいこ
とをやったが、今まで一度もタバコを吸ったことがない未成年に無理矢理タバ
コを吸わせたからプラスマイナスゼロ!それでいいな!」って言うから、私は
もともと3年しかいないつもりだから勤務評定なんか最初から全然気にしてい
ませんでしたので、「はぁ、別にいいっすよー」って言うと「よし、わかった
らお前はもう帰ってよし!」と言うので「ゆーじ士長帰ります!」と機関長室
を追い出されてしまいました。


それ以来、私に整列をやらせようとすると、必ず話が大事になるのを知って誰
も私に整列を言わなくなりました。そして下士官の間で整列の話が出そうにな
ると私が早めに見抜いて当人達に注意してましたので、私が辞めるまで3分隊
には一回も整列がありませんでした。


それは自分のJW経験の応用で、昔から「そんなことしたらムチだからね」っ
て言われて育ったんですが。それをちょっと応用して、「そんなことしてると
整列だからな」って言っただけなんですよ。


そしたら効く効く、もう笑っちゃうくらい効きます。「そんなことしてると整
列だぞ」って一言言うだけで、2等海士と1等海士達の目がいきなりつり上が
って気合いを入れて仕事をし始めます。


ムチにしろ整列にしろ、人を動かすには恐怖で縛ると効果絶大なんだなぁって
妙に感心した経験でした。


昔、会衆内のお局姉妹や小姑姉妹達のプレッシャーに負けてムチした(された)
人をいっぱい見ているんで、どうもそれと話がダブって意地でも整列かけたく
なかったんですよ。頭ブチ切れで開き直って話をわざとおおごとにしたんです
が、そうした方が解決できる事もあるんだなってこの時知りましたね(^^)


教訓:状況最悪でも、なせばなんとかなる(笑)


「整列」は私が海上自衛隊にいた時代にはさかんにやっていましたが、
最近はあまりやらないそうです。今の若い人はそんな事をすると
すぐに自衛隊をやめちゃうからね。













【事件現場その1】


写っていないが左側が非常発電機室入り口になる、右がトイレ、正面が舵機室
入り口、階段を上がると上甲板で外になる。ここは洗面所だが、核攻撃を受け
た場合、乗員がかぶった死の灰を洗い流すシャワー室も兼ねている(上部にあ
る白いパイプが海水シャワー用のパイプ)


【事件現場その2】


同じ場所から反対側を撮影、正面の人がいる場所が食堂、
後部居住区は食堂の地下にある。


【事件現場その3】


非常発電機室内部。ここが2人を呼び出して説教した場所。
そしてこの機械は、私が出港時に試運転する受け持ちの機械。




私が説教した2等海士が1等海士の時に後部居住区にて撮影
こいつは18歳なのにタバコを吸っていたほうで、この頃になると海上自衛隊
生活に完全に慣れて、なまいきになっちゃってて私の言うことなんか全然聞き
ません。


こいつは、私が海士長になってから受け持った奴なんだけど、仕事以外、私の言
うことなんか一切聞きませんので。頭に来て無視すると「ゆーじ士長、最近俺の
こと無視してるんじゃないですかぁ?」「そーだよ!お前全然かわいくないもん」
「そんなこと言わないで下さいよ、2人はお友達じゃないですかぁ」「俺、お前
のこと嫌いだから友達じゃないぜ、お前と一緒にすんなよな、お前を友達だなん
て思ったことは、今まで一度もないぞ、おまえなんか嫌いだ!」「まーたまた、
そんなこと言って嘘ばっかり、今日上陸したらゆーじ士長の下宿に遊びに行きま
すからね、絶対に下宿で待ってて下さいよ」「来なくていーよ、俺、お前のこと
嫌いだから」「わかってますって、ゆーじ士長は好きなこと言いたい放題言って
て下さいよ、俺はもう完全に慣れちゃってますから平気ですよ、今日必ず遊びに
行きますからね、待っててくださいよ」

私は偉い海士長なのに、いつもこいつに完全に舐められてました(大泣)




艦内で私に許される唯一のプライベートスペース。
3段ベットの一番下が私の場所。幅80cm,長さ2m,高さ70cmくらい。




説教した私が1等海士だった頃(20)
広島県にある江田島で、海上自衛隊の神様、日露戦争の日本海海戦に
勝った連合艦隊司令長官、東郷平八郎元帥の霊廟を見学した時に撮影。




ちなみにこの頃私がやってたことと言えば、

「○○士長、最近俺のこと嫌ってるんじゃないですか?」「そーだよ!お前全
然かわいくないもん」「そんなこと言わないで下さいよぉ、ぼくたち2人はお
友達じゃないですかぁ」「俺、お前なんか嫌い。お前と一緒にすんなよな、俺
はお前の事を友達だなんて思ったことは今まで一回もないぞ、だいたいお前は
仕事以外、俺の言うことを全然聞かないじゃないか、そんな可愛くないやつは、
でーきれーだ」「まーたまた、そんなこと言って嘘ばっかり、今日上陸したら
○○士長の下宿に遊びに行きますからね、待ってて下さいよ」「来なくていい
よ、俺はお前のこと嫌いなんだから」「わかってますって、○○士長は好きな
ことを言いたい放題言ってて下さいよ、俺は○○士長がいい人だって知ってま
すから何を言われても大丈夫ですよ、俺もう完全に慣れちゃってますからね、
今日必ず遊びに行きますからね」


海上自衛隊は笑ってごまかすが一切通用しない世界ですから、私が一等海士の
最後の頃に、当時、一番うるさくて一番怖い海士長の内懐に入って身を守る式
の世渡りをやっていた私の行動パターンを2等海士の頃にしっかり見ていたあ
いつは、それを完全にまねして海士長になってからの私の内懐に入ってくるわ
けです(大泣)









ゆーじ
2002/03/24


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