身内をなんとかしたいと思っているがやり方がわからなくて途方に暮れている人は、まず「カルトの子」を読ませることをお勧めします。そして「カルトの子」と「良心の危機」を読んで心が何も動かない人であれば、その人には当分何をやっても無駄だと思います。

■カルトの子―心を盗まれた家族 文藝春秋 \1,650

カルトの子―心を盗まれた家族

著者:米本和宏
単行本:ハードカバー サイズ:19cmx13cm
出版社: 文芸春秋 ISBN: 4163563709 (2000/12発行)

目次
プロローグ 「神の子」の骨折
第1章 超人類の子、オウム真理教
第2章 エホバの証人の子、ものみの塔聖書冊子協会
第3章 神の子、統一教会
第4章 未来の革命戦士、幸福会ヤマギシ会
エピローグ ママの魔法がとけますように
巻末資料 1998年11月三重県が実施したヤマギシ学園の児童・生徒へのアンケート

■カルトの子―心を盗まれた家族 文春文庫 \670

カルトの子―心を盗まれた家族

文庫本: サイズ:15cmx11cm
出版社: 文芸春秋 ISBN: 4167656930 (2004/02発行)

【カルトの子取材裏話】

この本には尾形健という名前で私も出ていますので取材の裏話を少し・・・

米本和宏さんは繊維新聞出身のルポライターでカルト宗教問題を扱うジャーナリストです。代表作には、洗脳の楽園―ヤマギシ会という悲劇(宝島社文庫)教祖逮捕―「カルト」は人を救うか(宝島社)などがあります。

それ以前に文藝春秋や週間文春でエホバの証人2世の問題を積極的に取り上げていたルポライターの米本さんが、文藝春秋編集部の判断でそれらをまとめて本にするということで追加取材を開始します。

1999年10月21日、ある人を介して私に取材の依頼がありました。しかしそれから半年近く放置されてしまったんですが、当時米本さんはヤマギシ会との裁判で忙しく裁判が一段落してから取材開始となりました。

米本さんが会う場所を指定してくれということなので私は「帝国ホテル」を指定しました。米本さんは「え、帝国ホテル?」とびびってましたが、こっちとしては取材の謝礼が出るわけでもないし相手は商売なわけで、米本さんの性根を見極めるつもりというもくろみもありました。

2000年4月2日、もう1人の元2世と帝国ホテルのロビーで待ち合わせして米本さんと会い、3人で取材開始となったわけですが、挨拶の後米本さんの取材意図を長時間聞き、どういう目的の本を出すのか詳細に語ってもらい、この人は信用出来ると判断してからインタビュー開始になりました。

当初は帝国ホテル内のレインボーラウンジ(昼間はコーヒー1杯1200円でおかわり自由なので長時間いると結局安くつく)の予定でしたが、レインボーラウンジが満席のためロビーの喫茶コーナー(コーヒー1杯800円、おかわり無し)での取材になりました。

結局私は5時間ぐらい喋ったんですが、米本さん曰く、私の話は古すぎるのでアウトラインとして使うということなので、「そりゃそうだ」という事で、もう1人の元2世とのインタビューを横で聞く形になり、米本さんの取材に全面協力する約束をしました。(計10時間に及んだ当日の取材の謝礼:コーヒー2杯、紅茶1杯、ショートケーキ1個、カツ丼1杯)

ところが米本さんはエホバの証人の2世に対してかなり勘違いしてるんですよ。それまでの取材で『エホバの証人の子供達はヤマギシ会の子供達と同じような存在で、いつもムチで叩かれている』という捉え方をしているので、私ともう1人の元2世とで「違うよ!米本さんは完全に勘違いしてる。2世の子供に対するムチはたくさんある精神的なプレッシャーの中の一つなの!2世の子供達はムチで叩かれてるけど、それは最終手段であってムチで叩かれてない子供もいるの!」という説明を延々とする羽目になりました。

私としても本を出すなら出すで、2世を正しく認識して、ものみの塔を正当に批判して欲しいと思っていましたので協力は惜しまないんですが、この筋金入りのルポライターはとにかく頑固でしたたかですから、こちらの書いて欲しいことなんか絶対に書きません。(同じカルトの子に出てくるヤマギシ会関係者はそれが読めず後でトラブルになったようです)

取材中に「こういうことを書いて欲しい」言うと「そんなのは自分で書けよ」って平気で言い出す人ですから、いい本を書いてもらうには米本さんの意識改革が必要だと判断して、取材のために他の元2世を紹介する時に、「米本さんはJW2世ってものを完全に勘違いしているから、JW2世とはどういうものなのかを米本さんに正しく認識させてあげて欲しい。そして本を出すなら出すで2世を正しく認識して、正当にものみの塔を批判する本が世に出るように協力して欲しい。後はそれをどう受け止めてどう書くかは米本さんの判断でいいんじゃないの、あの人は人の言うことを全然聞かない人だからさ」とお願いする形での紹介になりました。

私と一緒に取材を受けた元2世は米本さんに張り付き状態で、米本さんと何日も何日も話し合い、あげくに米本さんの自宅にまで遊びに行きだし(当人曰く、米本さんに対する個人的興味)、取材開始時にメールの操作方法が全然わかってなかったパソコン音痴の米本さんの古いパソコンの環境設定をしてあげたり、米本さんに頼まれて新規にパソコンを自作して設置してあげたりするし、他の元2世達も取材後に米本さんの疑問や質問を徹底的にフォローするという展開になりました。(当時の元2世達が、マスコミ関係者がJW2世について扱った本が世に出ることを真剣に願っていた時期だからでもありました)


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