昼寝するぶた 掲示板過去ログ:#2046

昼寝するぶた

ここでは、昼寝するぶた掲示板の過去ログを並べています。

No.2046 大事故に遭遇 投稿者:大空の浪人 投稿日:2003/01/14 05:31 元1世兄弟 冤罪で排斥でーす 壊れた事はないです 40代中盤   
お年寄りが次々に逝く時節ですが,5日の夜,兵庫県加古川市から帰宅途中,岡山県備前市内の国道二号線で,前を行く車が大クラッシュいたしまして,以下は別の内輪の掲示板に投稿したものをコピペします。ターボ&FR(+LSD無)の車にお乗りの方々はくれぐれもご注意を。
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新年の主日(日曜日)礼拝の後,信徒の兄弟のパソコンに取りついていた悪質なウィルスを晩までかかって退治した帰り道だった。
あまり長くない急勾配の追い越し車線。いつものように追い抜くためにアクセルを踏み込む。私の前を行くのは数q手前からお道連れになっていた白い乗用車。テールスポイラーの付いた若向きの車にしては安全運転なのは助手席に彼女を乗せているからなのだろう。
追い越し車線に入り,彼の車は加速の鈍い私の車を尻目に軽く左車線の車の列を追い抜いて行った。そこまでは慣れ親しんだ光景だった。
車列の先頭に出たところで彼は左車線に移ろうとしたように見えた。
「え? そんなところで譲ってくれても,こっちはディーゼルだから追い抜けないよ」
と思う間もなく歩道へ突っ込む気かと思えるほど急な左向きになり,次の瞬間,突然右に半回転して追い越し車線の私の前方に戻って来る,それも右真横を向いて。
「何をする?」
既に本能的に減速していた私の前を彼は横切ってセンターラインを越え東進車線に飛び込んだ。しかしそこには直進して来た対向の乗用車が…
「やめろ! バカヤロー!!」
思わず絶叫する私のすぐ右前方で,先頭のヘッドライトが迷走車を影絵のように照らし出し,そして消えた。右へ転がるかと思うほど大きく跳ね上がる迷走車から砕け散る破片が周囲の車のライトの中を舞う。辛うじて衝突に巻き込まれずに済んだが,自分の下でタイヤがガラスの破片を踏む音が,まるで素足で踏むように痛い。
ボヤボヤしてはいられない,これは重大事故だ。一瞬の影絵の中に,確かに助手席に人がいるのが見えた。もう死んでいるのだろうか。生きているなら助けてやらなくては。それとも遺族に最期の状況を報告してあげなくてはならないのか!
彼の迷走のために急減速していた左車線の車列に強引に割り込んで左端に停車したが,こんなところに車を置いておけない。上のパーキングゾーンに入れよう。そこまでのたった3〜40mの距離をとてつもなく遠く感じながら必要なものを考える。外は氷点下だ,オーバーコートだけは持って出ないと…左手でオーバーコートを探って掴み寄せる。他に必要なものは…すべては救急車を呼んでからだ。
パーキングゾーンの入り口に斜めに車を突っ込み,変速機のセレクターだけは慎重にパーキングレンジに入れ,右手でドアを開けながら左手でハンドブレーキを引き,オーバーコートを掴んで飛び降りるとちょうど車の列の切れ目だった。事故車のハザードランプ以外に明かりの無い暗い路面をオーバーコートに腕を通しながら駆けてゆくと東進車のドライバーらしい青年が歩道に立っているのが見えたので走りながら大声で安否を問う。
「大丈夫ですか!」
「は…はい…。でも,女の人が大怪我していて…」
二人乗っていることは分かっていた。衝突部位が助手席部分であることも見ていた。だから来たんだ!
迷走車に駆け寄ると,大きく陥没した助手席ドアの向こうには案の定,虫の息の女の子。迷走人らしき男の子が「○○○ちゃん,○○○ちゃん」と運転席から涙声で呼びかけているが,うめき声しか返って来ない。
「生きていますか!」
「はい,…でも…」
「救急車来るまで,頑張れ!」
救急車はもう呼んであることを確認しようとすると東進車のドライバーが言った。
「携帯を持ってるなら,救急車呼んでもらえませんか。僕じゃ,場所を説明できない…」
引き受けて携帯を取り出しながら,携帯から119番にかけて救急車を呼べるようになったかどうか不安になるが,こんな所で他に何ができるというんだ! 駄目なら坂の麓のローソンまで走って行くしかないのだが!
119番にはすぐつながった。応答が終わるのを待てずにまくし立てる。
「備前市の東の国道二号線で交通事故です。女の子が一人,重傷で車に閉じ込められています。乗用車同士の衝突事故で,上り車線がふさがっています」
声が震えているのが自分でも分かる,落ち着け! 落ち着け!
「わかりました。場所をもう少し詳しく」
「備前インターから備前の市街地へ向かう途中の,片側二車線になっている区間の東側です」
携帯番号を聞かれて救急車を待つことになったところで,東進車のドライバーが
「警察にかけてるんですが,場所が…代わりに説明してください」
といって自分の携帯を差し出した。彼の携帯で場所を説明しているうちに自分の携帯が鳴った。管轄の消防署らしい。
「何か目印になるものが見えませんか?」
車のライト以外に何が見えるものか!!!
「東の麓に新しくできたローソンがあります。この丘を西へ越えるといつか堤防が決壊したため池があるはずです」
備前市内の国道二号線で追い越し車線は備前インターそばの合流地点とここにしか無いのに,なぜ分からないのだ! 何とか場所を把握してもらおうと問答を繰り返すうちに,
「新幹線よりインター寄りですか,市街地寄りですか?」
ときた。
「それそれそれ!新幹線のすぐ先です。新幹線のところから始まる二車線の坂をインター側へ越えて下り坂になったところです」
「分かりました。すぐ行きます」
そうだ,二号線と交差している新幹線の高架のすぐ東と言えば通じるんだ,と思う間もなく,警察にさっきの続きを説明する。
「新幹線の先? 『おとぼけビーバー』というホテルのある所ですか?」
「そうです,『おとぼけビーバー』のところの坂道の真ん中あたりの上り車線をふさいで止まっています!」
とぼけても寝ぼけてもハムスターでもヌートリアでもいいから,とにかく早く来てくれ!!
大型車の一団が電話の声をかき消す轟音を上げて通り過ぎる傍らで懸命に事故現場の位置を説明しながら気がつくと,車の集団が去ったら一転して静かな真っ暗闇,頼り無く点滅する事故車のハザードランプ以外に明かりは無い。
それだけではない,ここは急な上り坂の頂上を越えた急な下り坂だ。東進・西進とも備前インターの合流車線から岡山バイパスの二車線区間まで延々と続く追越禁止区間の中の唯一の追い越しポイントで,どちらからも比較的短い急な上り坂の追い越し車線をフルパワーで抜き合い,競うように一車線に飛び込んだところで急な下り坂になる。そして頂上の短い水平区間と下り坂の入り口部分は複雑にカーブしていて直線部分に入るまで見通しがきかない。
もしフルスピードで一車線区間に入ろうものならハザードが目に入ると同時に急ブレーキをかけないと止まりきれないだろう。大型車は制動距離が長いし,乗用車は視点が低くて完全に下り坂に入るあたりに来ないとハザードが見えないはずだ。
もしも事故に気づくのが遅れて突っ込まれたら…このままじゃ危ない,もっと手前から確実に減速させる工夫をしなくては…大体,衝突を目の当たりにしたはずの周りの車の連中はどこへ行ってしまったんだ! 大事故なのを見ただろう! この子の脇をあのガラスを踏んで通って心が痛くなかったのか! 大怪我してるんだぞ! 手当が遅れたら死ぬかもしれないんだぞ! この子が他人の娘だから放っとくのか! 同じ人間なのに放っとくのか! 自分の娘がこんな淋しい死に方をしたら平気でいられるのか!
いや,怒ってどうなる,落ち着け! 主よ,御導きを! 落ち着け! 落ち着け! そうだ,パーキングゾーンに突っ立っているタウンエースをこっちへ回そう。もっと向こうへハザード点けて停めてやろう。三角反射板も積んであるから,無いよりはましだ。ようし,東進車線は空いているから,西進車線の車の列が切れたら向こうへ渡って車を回すぞ!
氷点下の暗闇でうめく女の子に
「救急車,すぐ来るからね。頑張れよ! 死ぬんじゃないぞ!!」
と声をかけて向こうへ走り出そうとした時,右から閃光に照らしだされて身がすくんだ。頂上を越えた大型車が迫って来る。
止まれ! 止まってくれ! 主よ,止めてください!
いまいましそうに車体を揺すりながら止まった大型トラックが西進車線の車列が切れるのを待つ短い時間のうちに後続車が列をなし,丘の頂上はノロノロ運転になっているのが見えた。あの列が途切れない限り二次衝突の恐れは無いだろう。ああ,主よ! これで時間が稼げる。その間に救急車と警察が到着してくれさえすれば!
再び轟音と閃光の交錯に戻った事故車の中で,彼は彼女の名を呼び続けていた。
「どう,意識はある?」
「あるんですけど…」
涙声で聞き取れない。
無残に陥没した助手席ドアの向こうの,僅かに残された空間で彼女は闘っていた。ドアを壊さないと救い出せないが,素手では無理だ。ドアの下にのぞいている靴と足先に血が伝って来ていないところをみると体外への大出血はしていないようだが,左半身はひどい骨折だろうし頭を激しく打ってもいるから,ここは救急車が来るのを待とう。…それにしても救急車は何をしているんだ! 早く来てくれ! この子を死なせたら許さないぞ!!
何をしていいか分からないでいる東進人に「落ち着け! 落ち着け!」と声をかけて自分を落ち着かせる。お互い,同じほどうろたえている。
救急車は…そのうちに必ず来る。二次衝突は…適当に渋滞してくれたから心配ない。残る危険は…火! 火が出たら万事休す。ガソリンの臭いは…しない,最初から気にしているが漏れている気配はない。下に流れているのは冷却水だ。良かった,水なら絶対引火はしない。でも万が一,ショートした電気配線から火が出たら…そうだ,消火器を用意して…消火器…消火器は…誰か,消火器を…どこかに消火器は…そうだ,タンクローリーは必ず消火器を積んでいる。渋滞の列で見つけて止めて頼んで消火器出してスタンバイしててもらおう,そうだとも,タンクローリーを止めればあの子はきっと助かる!
と,その時,轟音の切れ目にかすかに聞こえたのは…あれはサイレン? 本当にサイレン? 救急車の? 本当に救急車?? 轟音の切れ目で耳をそばだてる。サイレンが…聞こえる! こっちへ来る? 近づいて来る! 丘の向こうまで来ている! 坂道を登って来ている! もう車の轟音よりもサイレンの方が大きい! 救急車が来た! 来たぞ!
「聞こえるか? 救急車そこまで来てるよ。もう少しだからね。痛いだろうけど頑張れよ! 死ぬなよ! 負けるなよ!!」
回転灯が見えたのだろう,次々に停まり始めた西進車のガラスにもメッキ部分にも赤い光が映る…ここです,ここ!…ん??? パーキングゾーンへ入って私の車の方へ行ってる。違う!こっち,こっち! こっちだって!! 排気ガスで喉を傷めたのか大声が出ない。
どちらの車線の車も皆,救急車を見て事故車の手前で停車している。交錯するライトの中,追い越し車線に飛び出して両手を振ると,やっと分かった,こっちへ来る! 早く! 早く!!
「救急車が来たよ。手当してもらえるよ。助かるんだよ」
担架が降ろされ,救急隊員が駆け寄って来る。
「ここです,この中です! 助手席です! 閉じ込められてます!」
運転席側から点滴をつないで応急手当が始まったが,やはりドアを壊さないと助け出せない。
前後して警察の車が何台も到着して交通整理にかかると,再び現場は轟音の世界に戻った。消防車で到着したレスキューの職員たちがバールでドアをこじ開けて外したあたりで,私は現場検証のために警官に呼ばれた。
運転者は二人とも気が動転しているし,何が何だか分からないうちに衝突しているので,理路整然と説明できるはずもない。私が迷走の一部始終を見ていたこともあって,現場検証は私の説明を中心に,迷走の開始から衝突に至るルートを定めたが,事故発生時刻は私の携帯の発信履歴で119番通報が21:08となっていたので21:05と決まった。事故の原因がはっきりしているためもあるのだろうけど警察も結構いい加減なものだ。
事故車はどちらも自走不可能な状態なのでレッカーを呼ぶ。現場のすぐ先のレッカー屋だからさっさと到着して現場は片づけられた。
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その後彼女は岡山の赤十字病院に搬送されて一命を取り留めました。翌月曜日に,実家の神戸市から来た両親に事故の状況を説明するために病院に行きましたが,彼女は二十歳の看護学生で,この2月に国家試験を受ける予定だったそうです。迷走人は岡山市在住の22歳の社会人(実家はクルマ屋さん),ぶつかられた青年はやはり帰省していた岡山市の実家から神戸市の職場へ戻る最中だったそうです。
迷走人と当てられた青年はどちらも掠り傷ですが,彼女は重体で,頭蓋内に何カ所か軽い出血があるものの生命の危険は無く,骨折は鎖骨・肋骨・骨盤と左半身フルコースですが,鎖骨は性質上,放っておいてもくっつくらしい。肋骨は肺に刺さったらしく肺に小さな穴が開いているが,これも放っておいても治る(?)らしい。大変なのは骨盤で,左股関節自体は無事なものの,股関節を支える部分が陥没してぐしゃぐしゃになっていて,応急的に股関節を元の位置に引っ張ってあって,若いからそれだけで自然に治ってしまう人も多いが,経過が悪ければ専門病院で骨盤を開けて大手術になって,そうなると回復に要する期間が数カ月余分にかかるものの,元通り跳んだり跳ねたりできるようになる見込みだそうです。両親の看護の都合で実家のある神戸市内の病院へ移送しなくてはならないが,肺に開いた穴の経過が良好ならドクターヘリで10日(金)に搬送することになりそう(救急車で二時間余揺られるのは負担が重すぎるため)…というところまで聞いていましたが,果たして10日(金)に加古川市へ行く途中に病院に寄ると,ヘリで神戸市立市民病院へ搬送されたということで,経過はおおむね良好なようで,安心しました。来週,神戸市へ行く便があったら病院に寄って,家族にその後の展開を聞きたいと思っています(面会できるほど回復するのはずっと先のことでしょうけど)。
あの事故に遭っていなければ,きょうは彼女の成人式だったはずです。私も,普通に結婚していればそろそろの歳の子供がいるはずの歳です。何カ月・何年かかってもいいから本当の生還を遂げて,成人を祝えるようになってほしいと思っています。
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