昼寝するぶた 掲示板過去ログ:#2561

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No.2561 Re:タイタニック号の悲劇 投稿者:大空の浪人 投稿日:2003/03/14 23:52 元1世兄弟 冤罪で排斥でーす 壊れた事はないです 40代中盤   
タイタニック号で思い出しました…まだご存じない方のために,ばあねっとBBS過去ログから転載します。(メアドは当時のものです)

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投稿時間:1999/06/22(Tue) 01:23
投稿者名:大空の浪人
Eメール:m_imai@tiki.ne.jp
URL :http://www.tiki.ne.jp/~wt110ban/
タイトル:幻の楽園(フィクション)


第一章 腐った箱船
「あなたは楽園で永遠に生きられます!!」
Aさんは郵便受けに入っていたパンフレットの挿絵に目を奪われました。
「この国は金権腐敗,犯罪,薬物中毒,環境ホルモン等々,山積した問題で
滅びる運命にあります。エホバは真理を愛する柔和な人々のために楽園
を備えられました。無料で調べてみてください」。
パンフレットの説明に訪れた人が熱心に根拠を示してくれました。とて
も清潔で真面目な人で,こんな人が嘘をつくはずはない,とAさんは思いま
した。
「楽園で暮らすためには,そこへ行くための唯一の手段である『組織
丸』の乗客になることがどうしても必要です」。
そうでしょう,楽園はこの世のものではないので,自分自身の力でたどり
着くことは不可能な異次元の時空間にあって,ハルマゲドンの後に全地に
行き渡るからです。ハルマゲドンを生き残るためにはノアの箱船が預言
的に表していた組織丸の認められた乗客となって,楽園島へ航海しなけれ
ばならないのです。
Aさんは勧められて組織丸に行ってみました。大勢の柔和そうな人々が列
をなして乗船手続をしています。特設ステージでは乗船の決意をした人
たちが喜々とした表情でインタビューに答えています。
「私は反対する夫を捨てて楽園に行く覚悟です」とか,
「私は恵まれた仕事を辞めて楽園に行きます」とか,さらには,
「ここへ来る途中に子供の一人が死にそうになりましたが,組織丸で認め
られていない治療が必要だったので,死ぬに任せて来ました」と,人々が
嬉しそうに経験を語っていました。
「へー,そうまでして乗客になる人がこんなにいるのだから,きっとこれ
は真理に違いない。自分も,この人たちと一緒に楽園に行くのだ!!」。A
さんはどんどんそういう決意に傾いてゆきました。
「絶対,あれは詐欺だよ。あんなうまい話が本当ならみんな幸せになって
るよ。出航してから後悔しても手遅れだ。海の上で放り出されたらどう
やって生きて帰るつもりりんだ?」。
Aさんの友だちはも親族も,Aさんを引き止めましたが,Aさんは耳を貸しま
せんでした。組織丸の人たちの方が正直で誠実で,この人たちと一緒な
ら,たとえ騙されてもかまわない…とまで思えました。
組織丸が出航して,最初の数日間は興奮の連続でした。こんなに大きな,
豪華な客船で旅するのは初めてでした。乗客として受けるはずのサービ
スが全部セルフサービスになっていることには面食らいましたが,それも
また楽しい経験に思えました。出される食事も最初の数日間は新鮮に思
えました。
出航から数日後,顔見知りのBさんがこっそり耳打ちしてきました。
「ねえ,何か,おかしいと思わない?」
「えっ,何が?」
「だってさ,この船は外観はカッコいいけど,よく見るとかなり古い船だ
よ」
「どうして分かるの?」
「見たんだよ,溶接部分があちこち腐って,きしんでるんだ。ほら,そこの
壁の家具の裏,腐って穴があきそうだろ。うっかり船の底の方を見に行っ
た人は,用心棒みたいな若者たちに追い返されたので『何か怪しい』と感
じて後で忍び込んで覗いたら,船底は塩気で腐っていて,つついたらゴソ
ッと錆の塊が落ちてきたって。ナホトカ号だったか日本海で船体がもげ
て重油をばらまいたロシアの船があったじゃない。あのことを思い出し
たそうだよ。氷山なんかにあたったら一発で沈没だぞ。絶対に沈まない
構造になってるって話だったのに,鉄板が腐ってたんじゃ,構造もへった
くれもないよ」
「でも,見かけがこんなに綺麗な船なのはなぜなんだ?」
「忘れたのかい。自発奉仕者が綺麗に塗装作業したからだよ。エホバの
栄光にふさわしい,まばゆいばかりの美しい船になったって説明ビデオで
見ただろう」
レストランに行くとCさんが数人の乗客と一緒に苦情を申し立てていまし
た。
「『健康的な豊富なメニューで飽きさせない』という話だったのに,カレ
ーとラーメンしかないのはなぜだ!! まともな物を食わせてくれ」
レストランの幹部は答えました。
「人間は同じものを繰り返し食べているものなのです。昨日はビーフ・
カレー,今日はしょうゆラーメン,明日はカツ・カレー,あさっては味噌ラ
ーメンと変化をつけて飽きがこないようにしています。エホバの民はみ
な,この祝福された宴のような滋養豊富な食物に感謝を表明しています。
この船にいるかぎりは,出される料理を文句を言わずに食べなさい。いや
なら外の海水でも飲んだらどうですか」
船長に申し入れをするしかない,と考えてみんなで操舵室に行きました。
すでに大勢の人が押しかけていて,船長に詰め寄っています。
「この船は一体,どこへ向かっているんだ? 楽園島は赤道付近にあるか
ら南へ向かうはずなのに,昨日は東へ,今日は西に向かっている。東西に
往復していたのでは目的地に着かないじゃないか!!」
船長は平気な顔で答えました。
「これはタッキングといって,正しい航路を外れないようにするための航
法テクニックなのです。ご安心ください」
「じゃあ,目的地まであとどのくらいの距離なんだ?」
「非常に近いです。ご安心ください」
「到着予定はいつなんだ?」
「その日と時刻は申し上げられませんが,残された時は僅かです」
「もういい。金を返してくれ。立ち寄った港で下りて国に帰る」
「それは不可能です。乗船契約書をよくお読みください。お望みの方は,
外の海に放り出され,泳いで帰ることになっています」
「救命ボートがあるだろう。みんな,一緒に漕いで帰ろう」
「この船に救命ボートは搭載されていません。この組織丸自体が事物の
体制の滅びを生き残るためのエホバの救命ボートであって,決して沈むこ
とはないのですから」
唖然として自分の部屋に戻ると,隣の部屋のDさんが貴重品を盗まれたよ
うなんだけど心当たりは無いか?と尋ねます。Dさんの留守中にE長老が
入ってゴソゴソやっていたのを見たので,AさんはDさんと一緒に警備係の
所に行きました。
「年長者に対する訴えは,二人以上の証人が必要です」
目撃した時,Fさんも近くにいたことを思い出したAさんは,二人の証人が
いることを告げました。
「Fさんはつい先ほど,敵のスパイであった事実が立証されて海へ放り込
まれました。したがって証人はあなた一人しかいないので受け付けられ
ません」
AさんとDさんは直接E長老に談判に行きました。E長老は頭にきて,部下や
Aさんの目の前でDさんの顔を殴りつけました。
「人を殴る者には長老の資格が無い,というのが聖書の基準でしょう。E
長老を速やかに長老の立場から除いてください」
旅行する監督をやっとの思いで捜し当てたAさんはE長老の処分を求めま
した。。
「Dさんはたった今,背教者として排斥されました。E長老を訴えるのは悔
い改め,復帰を認められてからのことになります。排斥された人と交友を
持つことはできないので訴えを取り上げることはしません」
迷惑そうに背を向けて答える旅行する監督の脇を,何人もの人々がそれぞ
れ数名の若者たちに引きずられてゆきました。
「あの人たちはどうなるんですか?」
旅行する監督は背を向けたまま答えました。
「船から降りてもらいます」
「だって外は海じゃないですか」
「それは我々の知ったことではありません。キリスト教会が救済してく
れるでしょう」
「お金は返したんですか?」
「いいえ,お金を返す契約になっていません。法律的にも返す義務があり
ません」
「それでは詐欺じゃありませんか。『地上の楽園の予型』で『傷つける
ことも損なうこともない霊的楽園』だということで乗船契約をしたのに,
出航したら言いがかりをつけてお金を返さずに船から下ろすんでしょ。
しかも訴えを裁く長老たちは悪行者自身なんですよ。古い事物の体制以
上に悪どいヤクザ社会じゃないですか」
「やっと神権的な見方に目覚めましたね。あなたもそれに順応すればい
いんですよ。特権を追い求めなさい」
事の真相を確信できたAさんは,再び操舵室に向かいました。事態はすで
に一触即発の段階に至っていました。その時,操舵室のスピーカーがビリ
つくような見張りの者の絶叫が響きました。
「右舷に大船団。海賊船です!!」
「非常事態だ!! みんな持ち場に戻れ。あなた方乗客たちもクルーを助け
て戦うんだ。それとも火あぶりにされていいのか」
船長の一喝で群衆は我に返りました。海賊船団の出現で,さっきまでの争
点はどこかへ霧散してしまいました。


第二章 愛すべき敵たち
「データ,敵の船団の構成は把握できたかな?」
「はい艦長。草刈裁判で結束したキリスト教会の連合艦隊で,監禁主義が
共通の理念となっています。旗艦はどうもJWTCのようです。指揮命令系
統が一本化されていないため,コンピューターによる分析結果にファジー
な要素が伴っているので,戦局の場面場面で主導権が移る可能性が指摘さ
れています。主導権の移動や分割が予想される状況ではコンピューター
が自動的に再スキャンするように設定しました」
「スクリーンに映せ。おお,十字架を染め抜いた錦の御旗をかかげている
な。データ,あの十字架が乗客の心理に及ぼした影響はどうだ?」
「組織丸の乗客心理に対する影響は,プラス500ポイントと分析されまし
た。十字架や三位一体に対する嫌悪感を十分に注入してありましたから,
乗客の95パーセントはスクリーンに映った映像を見て身の毛がよだつ状
態になっており,残りの5パーセントは恐怖と嫌悪感のために気分が悪く
なったことを艦内センサーが察知して救護班が向かっています。いずれ
も戦闘能力にマイナスの影響が残る心配はありません。あの十字架のた
めに本艦乗客の戦闘能力は一時間後には海賊艦隊出現前の300パーセント
に向上します」
「そうか,しめしめ。さてデータ,本艦一隻で楽に戦えるかな」
「補給無しで少なくとも10回は戦って撃破できます。敵艦隊の意識や戦
闘システムは十字軍以来全く進歩していません。船を漕いでいるのは監
禁されて回心した元JWのうちの辛うじて教会に定着できた者たちとJWの
夫たちで,本艦出航後に海へ投げ込まれた裏切り者たちもいます」
「おやおや,鮫の餌食になったと思って同情してやってたのに」
「10人のうち9人はそうなっています」
「それで,敵艦体の武装はどうかな?」
「武装も大航海時代からほとんど進歩しておらず,本艦の防御スクリーン
の最低レベルで楽に一蹴できます」
「そんなことで,なぜ,あんなにゾロゾロ出てきたんだ?」
「そのあたりの意識も十字軍レベルと分析されました。『異端撲滅』の
発想,言い換えれば『聖戦』を標榜しているのです」
「今更,そんなことでは訴訟に勝てないだろうに」
「マインド・コントロールの線で攻める作戦ですが,裁判所により一蹴さ
れるでしょう。たとえ原審(一審)で敗訴しても控訴審で逆転します。最
悪でも上告審(最高裁)では絶対に勝ちます。上級審ほど事実認定より憲
法判断に重きが置かれて個人の自己決定権の見地からしか物事を見てく
れなくなることを彼らは認識できていないのです」
「同一教会相手の『青春を返せ』裁判でも,マインド・コントロールを立
証するための証人申請はほとんど退けられている現状だから,ものみの塔
相手にマインド・コントロールは無理だろうよ,法廷では。そのへんの戦
況が理解できないのかな,彼らは」
「だから十字軍以来全く進歩していないのです。指導者たちは自ら描い
たシナリオの盲点を認める能力を失っていて,部下に対しては情報操作を
して『神は共におられるから絶対に勝つ』と信じ込ませているのです」
「でも,そういうのをマインド・コントロールというのではないのかね」
「その通りです。ですから防御スクリーンのパラメーターを一部調整し
て,ただ跳ね返すだけでなく,発射された座標に戻すように設定しまし
た。これで彼らがマインド・コントロールを言えば言うだけ自らのマイ
ンド・コントロールを暴き立てる結果になります」
「面白いやり方だな,データ。それで,本艦としてはどのように戦うのが
ベストなのか?」
「ただ,海賊船団の中を駆け抜け,転回してまた駆け抜ける,ということを
繰り返していれば敵は自滅します。ワープエンジンを使うまでもなく,通
常エンジンの巡航出力で十分です」
「ほう,それはなぜかね?」
「こちらから攻撃するまでもなく,防御スクリーンのパラメーター調整に
より敵の放つ飛び道具はすべて発射された座標に戻されるので敵は自ら
を損ないます。本艦のスピードに付いて来ることは最初から不可能なの
ですが,敵はその事を理解できないため,漕ぎ手である元JWもJWの夫たち
も,教会指導者が考える以上に必死で漕いですぐに疲れ果て,放たれる飛
び道具が逆効果になるのを見せつけられて士気が低下します。その一方,
本艦の乗客たちは危機意識のために脱落者がほとんど出ない状態にもっ
てゆけるため教会側は漕ぎ手を補充できず,すぐに船足が鈍ります。最高
裁判例を確立する頃には海賊船団はみな漂流教会になっています。白け
ムードのためにJWもJWの夫たちも次々に脱落してゆく一方,監禁ビジネス
はとっくに挫折していてJWの補充がきかず,かといって一般人に地道に伝
道する能力も失っているので,勢力を盛り返す可能性はありません」
「追撃してくる可能性は考えられないのか?」
「それはゼロです。教会を挙げて支援した『聖戦』に惨敗することで牧
師の指導力は地に落ち,どの教会も指導部が交代して再出発することを余
儀なくされます。新指導部は監禁ビジネスには決して近寄らないでしょ
う」
「支援した牧師たちには気の毒なことだな。特に中沢牧師は尊敬してい
たのに,草刈氏と共に沈没する運命にあるとは本当に残念だ。私は悲しい
よ」
「アンドロイドには感情が無いので,相槌は打ちかねます。しかし,訴訟
の期間と勝訴から当分の間は艦内の反乱を防止することができます。タ
ッキングで目先をかわす必要が生じるまでに,たくさんの乗客を食い物に
することができるでしょう」
「それは良いことだ。副長,指揮を任せる。私は昼寝する。では,発
進!!」
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