むかしむかし、明の時代に謡いの名人がいたそうな…。
ある月のきれいな夜、謡いの名人は弟子をつれて街に出かけたとさ。するとある旅籠からだれかが謡うのが聞こえたとさ。弟子は目を閉じてじっと聞き入っていたそうな…。ふーっとため息をついて弟子は言ったとな…
「先生、みごとなものですね」。
振り向いてみると、謡いの名人もじっと目を閉じて聞き入っていたが、仏さまのような笑顔を見せて仰せになった…
「あの謡を止めてみせよう」。
そして歌いの名人はその旅籠の歌いの主に聞かせるように、朗々と謡いはじめたそうな…。すとなんと旅籠の謡いの主、ぴたりと謡いをやめて窓から名人を探し当てて、目を輝かせたとさ。
その年の暮れ、名人はやはりその弟子をつれて街に出たんだそうな。するとある酒場から謡いが聞こえてきた。今度のはひどいもので、聞くに堪えないものだった。弟子はたまらなくなって先生に申し出た、
「先生、あれはひどい。この前みたいに止めてください」。
しかし名人はくるりと背を向けて言い捨てたんだそうな。
「あのたぐいはとまらない」。
…下手っぴには芸の上手は理解できないというたとえ話です。1975年の「天声人語」に載った話。これって、芸だけのことかな…? 生き方や信念についても言えると思うのよね、わたし。甘えん坊にとっちゃ自分にだけ、いないいないばぁをしてくれなきゃ、「みんなが間違ってる」…。みんながあなたに見せる態度は、あなたがみんなに与えている隠れたメッセージのすがた。まわりがあなた好みに変わるのを待ってるのって、すんごい傲慢なのが分からないのよね。自分から変わらなきゃ、人間関係は変わらないものだったのよね、自分の経験で言ってるんだけどな、これ。
「水のなかで顔が顔に対応するように、人の心も人の心に対応する(箴言27:19/新世界訳)」。
ある月のきれいな夜、謡いの名人は弟子をつれて街に出かけたとさ。するとある旅籠からだれかが謡うのが聞こえたとさ。弟子は目を閉じてじっと聞き入っていたそうな…。ふーっとため息をついて弟子は言ったとな…
「先生、みごとなものですね」。
振り向いてみると、謡いの名人もじっと目を閉じて聞き入っていたが、仏さまのような笑顔を見せて仰せになった…
「あの謡を止めてみせよう」。
そして歌いの名人はその旅籠の歌いの主に聞かせるように、朗々と謡いはじめたそうな…。すとなんと旅籠の謡いの主、ぴたりと謡いをやめて窓から名人を探し当てて、目を輝かせたとさ。
その年の暮れ、名人はやはりその弟子をつれて街に出たんだそうな。するとある酒場から謡いが聞こえてきた。今度のはひどいもので、聞くに堪えないものだった。弟子はたまらなくなって先生に申し出た、
「先生、あれはひどい。この前みたいに止めてください」。
しかし名人はくるりと背を向けて言い捨てたんだそうな。
「あのたぐいはとまらない」。
…下手っぴには芸の上手は理解できないというたとえ話です。1975年の「天声人語」に載った話。これって、芸だけのことかな…? 生き方や信念についても言えると思うのよね、わたし。甘えん坊にとっちゃ自分にだけ、いないいないばぁをしてくれなきゃ、「みんなが間違ってる」…。みんながあなたに見せる態度は、あなたがみんなに与えている隠れたメッセージのすがた。まわりがあなた好みに変わるのを待ってるのって、すんごい傲慢なのが分からないのよね。自分から変わらなきゃ、人間関係は変わらないものだったのよね、自分の経験で言ってるんだけどな、これ。
「水のなかで顔が顔に対応するように、人の心も人の心に対応する(箴言27:19/新世界訳)」。