昔々、年老いた賢者が山の上の洞穴に住んでいた。
その賢者は『生』についての
いかなる質問にも答えられる聖者として、
はるか遠くの地にまで名を馳せていた。
彼は真実を語る人だった。
だが、彼の力に疑いを抱いている若者がいた。
いつの世でも、若者とはそういうものだ。
そんな若者の一人が、友人たちに豪語した。
『あの老いぼれの隠者に罠をしかけて、
絶対に正しい答えが出せないようにしてやる』と。
若者は手の中に、かわいそうなアメリカコゲラを握って
友だちに言った。
『これからその老人を探しに行く。
見つけ出したら、両手を後ろに隠すんだ。
そしてこう聞く。
“この手の中の鳥は生きているか死んでいるか”と。
もし、老人が“死んでいる”と言ったら、
両手を差し出して“ほら、生きている”と言う。
老人が“生きている”と言ったら、
鳥の首をひねってから見せて、
“死んでいる”と言ってやるんだ』
策略を胸に、若者は老人が住むという洞穴を見つけ
大きな声で呼ばわった。
『 老人よ! 老人よ! 』
中から返事が聞こえ、たずねた。
『お前の望みは何じゃな、お若いの』
若者は小鳥を後ろに隠してこう答えた。
『 実は、おたずねしたいことがあるのです! 』
洞穴の声が言った。
『それならたずねてみよ。お若いの』
若者はにやりとして言った。
『 今、私が後ろにまわした手の中には小鳥がいます。
この鳥が死んでいるのか、生きているのか
それをおたずねしたい! 』
短い沈黙があり、やがて洞穴から悲しげで
うんざりしたような声が聞こえた。
『それは、あんた次第だよ、お若いの』