私の愛する人は、エホバ国育ちで、
今もその幻影につきまとわれている。
歪められ、束縛された彼の魂は、
本来気高く、透明で、
たちまち私は心を奪われた。
嵐の中から彼を助け出し、
いつもそばでその傷を癒すため、
慣れない人間の足をもらって、
私は彼と同じ世界に住んでみた。
彼の心の傷が痛む度に、
私の足がヒリヒリ痛むのが嬉しかった。
まるでココロがひとつになっていくようで。
私を選んで、
ずっとそばで生きることを赦してさえくれれば、
私は、失った声も、楽しかった海の暮らしも、
家族の暖かさも、私自身の夢や願い、命さえも、
喜んで犠牲にすることができたのに。
私はできなかった。
もとの姿に戻るため、
彼の心臓をナイフで突き刺すことは。
たとえ泡となる定めと分かっていても。
彼の苦しみの方が、
私の悲しみより大きいことを知っていたから。
叫ぶ声も奪われ、溢れる涙は海に融けて消えて行く。
泡は空に舞った。
私はいま空気になって、彼の頬にそっと触れてみたい。
今もその幻影につきまとわれている。
歪められ、束縛された彼の魂は、
本来気高く、透明で、
たちまち私は心を奪われた。
嵐の中から彼を助け出し、
いつもそばでその傷を癒すため、
慣れない人間の足をもらって、
私は彼と同じ世界に住んでみた。
彼の心の傷が痛む度に、
私の足がヒリヒリ痛むのが嬉しかった。
まるでココロがひとつになっていくようで。
私を選んで、
ずっとそばで生きることを赦してさえくれれば、
私は、失った声も、楽しかった海の暮らしも、
家族の暖かさも、私自身の夢や願い、命さえも、
喜んで犠牲にすることができたのに。
私はできなかった。
もとの姿に戻るため、
彼の心臓をナイフで突き刺すことは。
たとえ泡となる定めと分かっていても。
彼の苦しみの方が、
私の悲しみより大きいことを知っていたから。
叫ぶ声も奪われ、溢れる涙は海に融けて消えて行く。
泡は空に舞った。
私はいま空気になって、彼の頬にそっと触れてみたい。