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レイモンド・フランズ著「良心の危機」170-171ページ
マラウイではエホバの証人たちが暴行や拷問を受け、女性は強姦され、家も農地も焼かれ、家族ぐるみで次々に国外脱出をしている。党員カードを買うのは背信行為だという教会の方針に従おうとしてのことである。一方メキシコでは、まったく同じ時に、エホバの証人たちが軍関係者に賄賂を払って軍務を果たしたという偽造証明書を手にし、支部の方では協会の指示したがって、これは組織の基準にも神の言葉の原則にも反するものではないと答えている。

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レイモンド・フランズ著「良心の危機」172-173ページ
協会からの返事は一九六九年九月五日付で、ニューヨーク法人の印章がついている。日付の前にある記号で会長が秘書の一人を通じて書いたものであることがわかる(Aというのが会長の記号で、AGというのがその秘書の記号である)。この時点では、マラウイのエホバの証人たちが政府の要求する党員カードの購入を拒否して一九六四年、一九六七年の二度にわたり惨状を味わっていたことも協会世界本部の方ではよく承知していた。これを頭に置いた上で、メキシコ支部宛の返事を見てみることにしよう。

A/AG 一九六九年九月五日
(中略)
軍隊関係であれ政治関係であれ、エホバの証人がそういう団体に加わったりすれば自動的に「断絶」したと見なされる。それでもメキシコ支部事務所では、軍務を修了したという証明書を(賄賂によって)手に入れたエホバの証人たちが軍隊の第一予備軍にいると明言しているのである。

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『ものみの塔の予言・教理の移り変わり』153ページ
"but it is their conscience, not ours, that has allowed them to take the course of action that they have taken."
「しかも、それは彼らの良心であって、私たちの良心ではありません。このことは彼らが自分たちの取るべき行動の方針を取ることを許すものです。」

上記「良心の危機」172〜173ページに書かれている、ものみの塔会長が秘書の1人を通じて書いた証拠であるA/AG(赤線部分)の記号が入った、1969年9月5日付、Mexico Branch(メキシコ支部)宛の手紙

私が現役だった時に、マラウイのエホバの証人達への迫害は集会で大きく取り上げられていましたが、メキシコのエホバの証人達が賄賂を払って軍務を逃れ、予備役の兵士となっているなんて話は聞いたことがありませんでした。

1965年頃、駐日マラウイ大使宛に、マラウイのエホバの証人に対する迫害をやめてくれるようにお願いする嘆願書が各会衆にまわってきて、日本中のエホバの証人が署名しました。その時に、未成年による署名は無効票になるからということで、当時小学生だった私は嘆願書に署名できませんでした。

エホバの証人情報センターによる「良心の危機」の妙訳

著者 (翻訳者)樋口久氏のコメント,

レイモンド・フランズ氏は、「エホバの証人」組織内部に数十年を過ごし、その最高幹部の一員として活躍し、そして辞めた人物です。そしてこの本を書きました。こういう本は、めったにありません。

エホバの証人組織というのは、世界にざっと500万人、日本でざっと20万人の成員を有する、ちょっとした大組織です。(もちろん、ものすごいお金も動いています。実際のところ、なかなかの優良企業なのです。)自ら知りつくしたその組織について、内部の文献や実際の出来事に基づいて、淡々と語ります。

エホバの証人の教理はどのようにして作られるのか。聖書を信じるとはどういうことなのか。組織(の上層部)はなぜ腐敗するのか。そもそも信仰とは何なのか。― いろいろなことを問いかける本です。エホバの証人の皆さんや家族にエホバの証人がおられる人はもちろん、クリスチャンにとっても、一般の人々にとっても、参考になる内容です。

本書の構成は、次の通り:序論(第1章);エホバの証人組織内部での生活を回想する部分(第2-6章);特に年代予言に関する教理の成立を詳述する部分(第7-10章);組織をやめた前後経緯の回想(第11-12章);その後の心境(第13章)。聖書やキリスト教になじみの薄い方は、やたらに聖書の引用などが出てくるので閉口なさるかもしれませんが、話の本質は十分に味わって頂けることと思います。

わが国では、宗教の話題は一種のタブーです。触りたくない式の心理がまだまだ広く見られます。そんな風潮の中でこそ、「宗教はコワイ」式の安っぽい通念を越え、実感に基づく当たり前の感覚を取り戻すのが重要でしょう。本書は、人間の怖さ、団体の恐ろしさを描きつつ、またそれに気づくことのできる人間精神の健康さ、魂のしなやかさを表現した、稀有な記録です。

■良心の危機 「エホバの証人」組織中枢での葛藤
レイモンド・フランズ (著), 樋口 久 (翻訳)

原著Crisis of Conscience第3版(1999年発行)の完訳。

せせらぎ出版 。ISBN 4-88416-102-5 C0014 価格\3,800

注:一般の書店で販売される書籍です。

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■翻訳者の樋口 久氏の「エホバの証人についての雑文:その1〜3」はユーモアが効いてて大好きです。

その1:エホバの証人のためのガイド:より効果的な伝道活動のために

その2:対話に向けて

その3:対話に向けて その2:エホバの証人であることの魅力

■こういうキャンペーンがあります、賛同したら協力を

『良心の危機』図書館設置キャンペーン参加のお願い

ゆーじ

2002/04/27


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