岩月謙司(いわつきけんじ)
1955年、山形県生まれ。早稲田大学卒業後、筑波大学大学院博士課程修了。テキサス工科大学、日本石油樺央技術研究所などを経て、現在、香川大学教育学部教授。専攻は、動物生理学、動物行動学および人間行動学(対人関係論、親子関係論)。91年に東洋経済新報社・第8回高橋亀吉賞を受賞。研究者として動物行動生理学と人間行動学の二足のわらじをはき、動物行動生理学についての論文を国際科学ジャーナルに発表する一方、親子、対人関係のメカニズムを、新聞、雑誌、ラジオ、TVなどで発表している。
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【資料】機能しない家庭が作るアダルトチルドレン
[下図]はクリッツバーグというアメリカのセラピストが、「ACoA症候群」という本の中でまとめたアルコール依存症者を抱えた家族と健康家族との相違点です。しかし、アルコール問題の有無に関わらず、機能不全を起こしている家族は全て[下図]のような特徴を備えています。
注:以前はアルコール依存症(アル中)の親に育てられた人をアダルトチルドレンと言いましたが、現在は「機能不全家族」の中で育ってきた人をアダルトチルドレンと言います。
機能不全家族は全体主義国家や宗教的カルトのように個々の家族成員を拘束して、一定のルールのもとでの生活を強制し、個々のプライバシーを軽視します。その被害をとくに受けるのが子どもたちで、親から有形無形に侵入され、家のルールに自ら進んで拘束される「良い子」になりがちです。
彼らは窒息感を抱きながらも、家族から離れられず、家族の現状を躍起になって守ろうとします。この努力が重ねられるうちに、子どもたちは機能不全家族を維持し続けるための一定の役割にはまりこみ、それを演じ続けることになります。(略)
これらの子どもたちに共通しているのは、自分の都合ではなく。家の中の雰囲気、母親の顔色、父親の機嫌などを優先して考えることです。(略)
こうした生き方の結果として、彼らは自分の感情を感じることができません。自分の欲望を持つことができません。自分の欲望を棚上げしたまま他人の欲望を自己に取り入れ、それを自分の欲望のようにして生きているわけです。
機能している家族と機能していない家族の相違
機能不全家族
●強固なルールがある
●強固な役割がある
●家族に共有されている秘密がある
●家族に他人が入り込むことへの抵抗
●きまじめ
●家族成員にプライバシーが無い(人間の境界が曖昧)
●家族への偽りの忠誠(家族成員は家族から去ることが許されていない)
●家族成員の葛藤は否認され無視される
●変化に抵抗する
●家族は分断され、統一性が無い
機能している家族
●強固なルールが無い
●強固な役割が無い
●家族に共有されている秘密が無い
●家族に他人が入ることを許容する
●ユーモアのセンス
●家族成員はそれぞれ個人のプライバシーを尊重され、自己と言う感覚を発達させている
●個々の家族成員は家族であることの感覚を持っているが、家族から去ることも自由である
●家族成員間の葛藤は認められ解決が試みられる
●常に変化し続ける
●家族に一体感がある
■機能不全家族で育った子ども(アダルトチルドレン)の特徴
・周囲が期待しているように振る舞おうとする
・何もしない完璧主義者である
・尊大で誇大的な考え(や妄想)を抱いている
・「NO」が言えない
・しがみつきと愛情を混同する
・被害妄想におちいりやすい
・表情に乏しい
・楽しめない、遊べない
・フリをする
・環境の変化を嫌う
・他人に承認されることを渇望し、さびしがる
・自己処罰に嗜癖している
・抑鬱的で無力感を訴える。その一方で心身症や嗜癖行動に走りやすい・離人感がともないやすい
引用資料:「アダルトチルドレンと家族」斉藤学 学陽書房
機能不全家族とエホバの証人家族との相違
機能不全家族
●強固なルールがある
●強固な役割がある
●家族に共有されている秘密がある
●家族に他人が入り込むことへの抵抗
●きまじめ
●家族成員にプライバシーが無い(人間の境界が曖昧)
●家族への偽りの忠誠(家族成員は家族から去ることが許されていない)
●家族成員の葛藤は否認され無視される
●変化に抵抗する
●家族は分断され、統一性が無い
エホバの証人家族
●強固なルールがある(家庭内での「頭の権威」のルール)
●強固な役割がある(家族内の権威に関する取り決めに従順に従う)
●家族に共有されている秘密がある(組織の内密な事柄は守らなければならない)
●家族に他人が入り込むことへの抵抗(信仰のために非信者とは距離を置く)
●きまじめ(組織の取り決めには忠節を持って従う。集会参加,伝道活動,ノルマの達成)
●家族成員にプライバシーが無い(頭の権威への絶対的な服従)
●家族への偽りの忠誠(家族成員は組織から離れることが許されていない)
●家族成員の葛藤は否認され無視される(家族揃って楽園に行くために今を我慢する)
●変化に抵抗する(反対者の話しを聞くと悪魔サタンのえじきになるから聞かない)
●家族は分断され、統一性が無い(家族成員が断絶したら絶縁、教理変更には盲目的に従う)
エホバの証人の社会には、あるべき正しいエホバの証人家族とされている「神権家族(家族全員信者)」の明確なイメージがあり、それがエホバの証人の理想的な家族とされていますが、神権家族とはアダルトチルドレンを量産する「機能不全家族」そのものです。
2004/07/23