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           【 カルトの子 心を盗まれた家族




身内に超熱心な現役信者がいる親族から「目を覚まさせるにはどうすればいい
んですか?」という質問をよく受けるのですが、その信者がこのサイトを隅か
ら隅まで読んでくれればたいてい目は覚めるはずなんですが、「読め」と言っ
てもまず読んでくれません。


その理由は、ものみの塔組織のすることは絶対に正しいので、組織のすること
に対してぐだぐだ文句を言う私のような排斥された元信者は、エホバ神に逆ら
う極悪非道の背教者であり、悪魔サタンに取り込まれた極悪人であり、ハルマ
ゲドンで必ず滅ぼされる哀れむべきかわいそうな人だから、読むと自分の信仰
の為に良くないので、「ハルマゲドンで自分が死にたくなかったら見るな!」
とものみの塔組織から強烈にマインドコントロールされているからです。


とはいえ、ものみの塔のマインドコントロールの影響が浅い人は自分の脳味噌
でちゃんと物事を考える能力がまだ残っていますので勧めれば読んでくれるで
しょうが、強固な信仰で視野狭窄状態になっているバリバリのエホバの証人は
私が排斥者だとわかった時点で、もし読んで自分の信仰心が崩壊してしまうと、
もうすぐ来るハルマゲドンで間違いなく自分が滅ぼされて殺されてしまうと思
いこむように作られた『滅びの死』の恐怖の教理でパニックになってしまい、
思考が自動的に機能停止して、エホバ神に殺されてしまう恐怖から断固として
読むことを拒否します。

てことは、私は排斥された元兄弟ではなく「バプテスマを受けていない元2世研究生」
だと偽れば確実に読んでくれるわけですが、私が15歳の時に背教の罪で排斥されたの
は『私は親と組織に人生を捧げるロボットではない!』という意志表明の結果であり、
私が排斥されたことは自分に誇るべき15歳の勲章であると認識していますので、自分
が過去に排斥された事実を隠す気は一切ありません。(堂々と胸を張って言ってます)



そういう、強烈にマインドコントロールされたエホバの証人にお勧めの本は、
フリージャーナリストでルポライターである米本和宏氏の書いたカルトの子
と、ものみの塔4代目会長、故フレデリック・フランズの甥で、ものみの塔の
最高幹部である「統治体」メンバーであった、レイモンド・フランズ氏が書い
良心の危機の2冊です。


信仰で視野狭窄になった信者は自分の信仰心の維持に不都合のある本は一切読
みませんのでネットの情報も見ませんし、ものみの塔組織に都合の悪い事が書
いてある本も読みません。それはいつまでも自分の夢を見ていたいから、自分
の夢を覚まさせる現実的な情報に自動的に恐怖に感じてしまうように長い時間
をかけてマインドコントロールされてるからです。

神に対して片思いの恋愛感情を持っている状態や、子供が親に求める愛情に飢えている状
態や、結婚詐欺師に騙されて恋は盲目になっている状態に近い。



ですからその条件から外れる形でアプローチする必要があります。それが「カ
ルトの子」です。この本はオウム真理教、統一教会、ヤマギシ会、エホバの証
人の子供達の事を書いたルポルタージュ本で、ものみの塔組織が「それは悪魔
サタンの罠だからエホバ神に滅ぼされたくなかったら見るな!」と指導してい
る背教者文書に当てはまらないジャンルの本です。


「カルトの子」を読んだ結果、ものみの塔組織の内情に対して疑問や興味を持
った時期を見計らって元最高幹部の書いた「良心の危機」をタイミング良く読
ませればたいてい目が覚めます。それからネットの情報を読むようにアプロー
チすれば目的は達成できると思います。(情報の押しつけは失敗の元です。ど
んなに有効な情報でも相手の脳味噌でしっかりと考えさせるように話を持って
いかないと失敗します)


但しこれには条件があって、ものみの塔の教理は昔から首尾一貫していて絶対
に正しいと信じている人(1世信者に多い)が読むと効果絶大ですが、教理よ
り人間関係を優先している人(2世信者と女性信者に多い)は一読して「そん
なことは昔から知っている」と言い出します。(世間知らずだから問題点を認
識出来ず内容を理解出来ない。その上問題点を認識出来ないように長期間のマ
インドコントロールを受けているので自動的に思考停止状態になってしまう)


その場合は焦らず急がず、疑問の種を植える事で良しとするべきでしょう。疑
問の種はいつか必ず芽を出します。芽を出せば葉が開いて花が咲き、いずれ収
穫できる日が来ます。その日のために刈り入れを焦らず、「北風と太陽」の寓
話の太陽になったつもりで気長に水と栄養と日光を与えて養えば将来の可能性
が開けます。


「エホバの証人を辞めさせて一丁上がり」は駄目です。この宗教の特殊性は辞
めた後に、それまでの見えないものに対する過剰な依頼心と依存心が消えてし
まった反動で精神的に不安定になってしまうことです、ですからエホバの証人
を辞めさせるのであれば、辞めた後の精神的なケアのために受け入れ側の愛情
(家族の愛情、夫婦の愛情)が何より大事です。そうしないとそれまでの過剰
な依頼心と依存心の消失から来る心の不安を満たすために別の宗教に走る事に
なり、場合によってはエホバの証人を辞めさせない方がよかったと言う事もあ
り得ます。

よくあるパターンは、エホバの証人を辞めてそのままキリスト教会に乗り換えるパターン
です。よく考えてからキリスト教会に移るのは大いにけっこうですが、自分の心の問題点
を何も認識せず、自分の心を正面から見つめるのが怖いから努力もしないで自分の不安な
心を満たすために盲目的に右から左に宗教を乗り変える人がいます。まぁ一般のキリスト
教会は他人にそれほど迷惑かけませんのでそれはそれでもいいんでしょうけどねぇ・・・

日本のキリスト教徒の人口比は約1%と言われています。(JWを含む)エホバの証人がJW
を辞めると他の選択枝はキリスト教しか無いと思いがちですが、実はそれは日本人人口比
の1%にしか過ぎず、他の99%の選択枝、つまり世の中には神道、仏教、禅宗などがあ
りますし、無信仰、無神論もあります。その他にも自分が納得する生き方を優先して宗教
教団に頼らないで生きるライフスタイルもあるわけですが、そういう選択枝が世の中に存
在していることに気が付かない人が異常に多いです。



身内をなんとかしたいと思っているがやり方がわからなくて途方に暮れている
人は、まず「カルトの子」を読ませることをお勧めします。そして「カルトの
子」と「良心の危機」を読んで心が何も動かない人であれば、その人には当分
何をやっても無駄だと思います。








カルトの子―心を盗まれた家族 文藝春秋 ¥1,650

著者:米本和宏
単行本:ハードカバー サイズ:19cmx13cm
出版社: 文芸春秋 ISBN: 4163563709  (2000/12発行)



目次
プロローグ 「神の子」の骨折
第1章 超人類の子、オウム真理教
第2章 エホバの証人の子、ものみの塔聖書冊子協会
第3章 神の子、統一教会
第4章 未来の革命戦士、幸福会ヤマギシ会
エピローグ ママの魔法がとけますように
巻末資料 1998年11月三重県が実施したヤマギシ学園の児童・生徒へのアンケート







カルトの子―心を盗まれた家族 文春文庫 ¥670

文庫本: サイズ:15cmx11cm
出版社: 文芸春秋 ISBN: 4167656930  (2004/02発行)







【カルトの子取材裏話】


この本には尾形健という名前で私も出ていますので取材の裏話を少し・・・


米本和宏さんは繊維新聞出身のルポライターでカルト宗教問題を扱うジャーナ
リストです。代表作には、洗脳の楽園―ヤマギシ会という悲劇(宝島社文庫)
教祖逮捕―「カルト」は人を救うか(宝島社)などがあります。


それ以前に文藝春秋や週間文春でエホバの証人2世の問題を積極的に取り上げ
ていたルポライターの米本さんが、文藝春秋編集部の判断でそれらをまとめて
本にするということで追加取材を開始します。


1999年10月21日、ある人を介して私に取材の依頼がありました。しかしそれか
ら半年近く放置されてしまったんですが、当時米本さんはヤマギシ会との裁判
で忙しく裁判が一段落してから取材開始となりました。


米本さんが会う場所を指定してくれということなので私は「帝国ホテル」を指
定しました。米本さんは「え、帝国ホテル?」とびびってましたが、こっちと
しては取材の謝礼が出るわけでもないし相手は商売なわけで、米本さんの性根
を見極めるつもりというもくろみもありました。


2000年4月2日、もう1人の元2世と帝国ホテルのロビーで待ち合わせして米本
さんと会い、3人で取材開始となったわけですが、挨拶の後米本さんの取材意
図を長時間聞き、どういう目的の本を出すのか詳細に語ってもらい、この人は
信用出来ると判断してからインタビュー開始になりました。

当初は帝国ホテル内のレインボーラウンジ(昼間はコーヒー1杯1200円でおかわり自由
なので長時間いると結局安くつく)の予定でしたが、レインボーラウンジが満席のため
ロビーの喫茶コーナー(コーヒー1杯800円、おかわり無し)での取材になりました。



結局私は5時間ぐらい喋ったんですが、米本さん曰く、私の話は古すぎるので
アウトラインとして使うということなので、「そりゃそうだ」という事で、も
う1人の元2世とのインタビューを横で聞く形になり、米本さんの取材に全面
協力する約束をしました。(計10時間に及んだ当日の取材の謝礼:コーヒー2
杯、紅茶1杯、ショートケーキ1個、カツ丼1杯)


ところが米本さんはエホバの証人の2世に対してかなり勘違いしてるんですよ。
それまでの取材で『エホバの証人の子供達はヤマギシ会の子供達と同じような
存在で、いつもムチで叩かれている』という捉え方をしているので、私ともう
1人の元2世とで「違うよ!米本さんは完全に勘違いしてる。2世の子供に対
するムチはたくさんある精神的なプレッシャーの中の一つなの!2世の子供達
はムチで叩かれてるけど、それは最終手段であってムチで叩かれてない子供も
いるの!」という説明を延々とする羽目になりました。


私としても本を出すなら出すで、2世を正しく認識して、ものみの塔を正当に
批判して欲しいと思っていましたので協力は惜しまないんですが、この筋金入
りのルポライターはとにかく頑固でしたたかですから、こちらの書いて欲しい
ことなんか絶対に書きません。(同じカルトの子に出てくるヤマギシ会関係者
はそれが読めず後でトラブルになったようです)


取材中に「こういうことを書いて欲しい」言うと「そんなのは自分で書けよ」
って平気で言い出す人ですから、いい本を書いてもらうには米本さんの意識改
革が必要だと判断して、取材のために他の元2世を紹介する時に、「米本さん
はJW2世ってものを完全に勘違いしているから、JW2世とはどういうもの
なのかを米本さんに正しく認識させてあげて欲しい。そして本を出すなら出す
で2世を正しく認識して、正当にものみの塔を批判する本が世に出るように協
力して欲しい。後はそれをどう受け止めてどう書くかは米本さんの判断でいい
んじゃないの、あの人は人の言うことを全然聞かない人だからさ」とお願いす
る形での紹介になりました。


私と一緒に取材を受けた元2世は米本さんに張り付き状態で、米本さんと何日
も何日も話し合い、あげくに米本さんの自宅にまで遊びに行きだし(当人曰く、
米本さんに対する個人的興味)、取材開始時にメールの操作方法が全然わかっ
てなかったパソコン音痴の米本さんの古いパソコンの環境設定をしてあげたり、
米本さんに頼まれて新規にパソコンを自作して設置してあげたりするし、他の
元2世達も取材後に米本さんの疑問や質問を徹底的にフォローするという展開
になりました。(当時の元2世達が、マスコミ関係者がJW2世について扱っ
た本が世に出ることを真剣に願っていた時期だからでもありました)


2000年6月3日、これから執筆開始ということでJR神田駅の居酒屋でそれまでに
取材を受けた数人と共に米本さんと飲んだんですが、それ以前に比べて格段に
進歩した米本さんの2世認識にびっくりするとともに、「確かに米本さんは2
世を正しく認識してくれたけど、さてこれをどうやって本にまとめるんだ?」
という泥沼の2世の世界を感じながら、「まぁ上手く行けばめっけものだな」
という感じで別れたんですが、その後出版された本を読んで、「さすがはプロ。
JW2世について完璧に認識している。プロのジャーナリストとはこういう切
り口で世に訴えていくのか」と感心させられました。(2000年12月出版)


後日米本さんに「あのさぁ、尾形健って何よ。なんでこんな芸能人みたいな名
前になったわけ?本名を出していいって言ったじゃん」と聞くと「取材した他
の人たちが本名を出すと困るからってことで編集部の判断で全員仮名にした。
名前を決めるのにネタ切れだったから同窓会名簿を流用した」との事でした。


米本さんとは最近会ってませんが、飲むと毒舌を吐く、愛すべき糞オヤジであ
ります。









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2004/04/29