これを一般の世の中の常識に当てはめれば、僧侶や牧師の家庭に生まれた子供が、家業を継ぐために親に無理矢理進まされるコースなんですが、JWの場合は、末端信者の子供が全員目指すべきコースになります。

で、こういうのって、子供に聖職者になる道を無理矢理強制するわけですから、子供を愛する親としては、これもある意味正しい教育かもしれません。 が!

これは条件付きの正しいです。それは、子供がJW組織にいる限りにおいてのみ有効な教育だからです。将来、子供がJWを辞めたら全部無駄な努力になってしまいます。それは、一般的な日本人のように、卒業したら就職して、ちゃんと一人で働いて食べて行けるようになって、結婚して家族を作って幸せになるようにという目的の教育じゃなくて、世の中でまとも働いて普通に生きて行く事なんか完全に度外視して、JWの聖職者になるためだけの特殊教育をしているからです。

JWの親が、子供をこの目標に行かせるために教育ママをやるのは、完全な子供に対する愛情から出ているんだと思いますよ。しかし、何かのきっかけで子供がJWを辞めたとたんに、ガス水道完備、水洗トイレ付き、エアコン完備、ロフト付き、全室床暖房付きの日本の家庭から、戦火のアフガニスタンに飛ばされたくらい、世の中の常識が一変します。

親の側からすれば、日本の我が家にいれば安全で楽なのに、何を好きこのんでアフガニスタンなんかに?って思いますから、子供に「あなたは間違った道を進んでいるんだから、今すぐもどっておいで、」と言うわけですが。子供はJWの一員として生きていくのは嫌だ。と言う道を選択したわけですから、絶対に戻って来ません。

子供の側からすれば、自分は日本に住んでいて日本で生活しているのに、自分の親は、お花畑のお菓子の家に住んでいて、確かにいれば居心地はいいかもしれないけれど、お菓子は全部賞味期限切れで、食べると下痢を起こす家にしか見えません。

つまり親がJWを信仰して心の底から幸せだ思っているのとは逆に、子供にとってJWとは、いても全然楽しくない、禁欲的なつまらない世界なんです。

たぶん、その気持ちは現役信者の親には絶対に理解できないのではないでしょうか? もし事前にそれが理解できれば、子供を愛している親は、子供がJW以外の世界では生きていけない教育なんて絶対にしませんからね。

だからこれは、はっきり言って、子供の本当の気持ちを読めなかった親の教育の失敗です。

1.もっと頑張って、正しいエホバの証人として育てるべきだった。
2.もっと子供の気持ちを察して、子供の意志を尊重して育てるべきだった。

正しい答えはどっちでしょう?

宗教やってる人は、絶対に自分の信じている事が一番正しいと思ってますから、私が「正しい答えは2だよ。」って言っても絶対に聞きません。だから正しい答えなんかどうでもいいです。 問題はその後なんです。

JWを辞めると必ず子供の心が壊れ始めます。私みたいに兄弟まで行った人間はそれなりに、子供の頃数年しかやってない人もそれなりに壊れます。そして子供は小さい頃から毎日のしんどい生活から逃げるために、2重人格(面従腹背)で生きて行く事を覚えていますから、親にはそれがまず読めません。

私がオフ会で会った元2世で、『僕の親は、「他の辞めた2世の子は頭がおかしくなった人もいるみたいだけど、うちの子は絶対に大丈夫よ。」って周りに言ってるんですよ。』と笑って話す、心が壊れてしまった元2世を何人も知っています。

今まで私がオフ会で出会った元2世は100人以上いますが、親が信仰に熱心であればあれほど壊れ方がひどいと言う共通点があるようですね。そして、特に壊れてるのは、神権家族で長老の息子や娘だった元2世です、神権家族は家庭の中に子供の逃げ道がどこにもありませんからね。

さて、信仰が原因で離婚した母子家庭で育って、15歳でJWを離れてから完全に心が壊れた私の場合ですが、

まず最初に襲って来るのが強烈な【罪悪感】と【不安感】です。
次に【劣等感】が来ます。それから【納得出来ない怒り】ですね。
その後感じる【無常感】と、たまに来る【心のパニック】
そしてJW経験を忘れた頃に【いつまでも絶対に消えない心の不安】
が残ります。(私は自分の心を直すのに15年近くかかりました。)

この原因は、親が子供に対して宗教の選択の自由を、口では与えていても、実質的には他の道を絶対に選択できないような状況で教育をした結果なのです。そしてJWを離れると生きていけない子供に育ててしまったからなのでした。

子供はとにかくJWの世界が嫌で、ちゃんと親を納得させられるような理由なんか全然無くて、とにかくJWが嫌だから離れるわけですが、親にとってJWとは、自分が長い間苦労してやっと見つけた真理な訳で、これ以上のものは世の中には絶対に存在しない、大人の自分が時間をかけて正しいと判断したんだから、子供にも絶対に正しいはずだと思い上がってしまい、子供に対して「世の中は全て間違っている。JWの言うことだけが全て正しい。」と教え続けた結果、一般社会では全然通用しない子に育て上げてしまったのでした。

この原因は全て親の教育の結果です。

ここまで行ってしまうと、もう親の手には負えません。子供は一生かかって直さなくてはならないトラウマを背負ってしまいましたし、JW組織の教えしか信じない親の価値観では絶対に子供の心を直せません。もはや完全に手遅れです。

ここから子供は、自分で直せる人はものすごい時間と努力をして自分の心のトラウマを直すための人生が始まりますし、自分で治せなくなって症状がひどい子供は精神科に通う事になります。


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