11 子供には制限を設けてやる必要があります。それがないと子供たちは不安で心が落ち着きません。制限を課されそれを守るときに,子供たちはグループの一員であることを自覚します。規則を守っているゆえにそのグループに属しグループに受け入れられていると感じるのです。放任主義は子供を見捨てることであり,子供がひとりで失敗を重ねるのをそのままほうっておくことです。その結果を見れば,子供には,制限に関してしっかりした信念を持つ,そしてその信念を子供にも持たせる大人が必要である,ということがわかります。地上に住む人にはすべて制限が課されており,その制限は個人の幸福と益をもたらすということを,子供は理解する必要があります。他の人がわたしたちの自由の範囲を認め,わたしたちが他の人のそれを認めるときにのみ,わたしたちは自由を楽しむことができます。適切な正しい制限を踏み越えるということは明らかに,『兄弟の権利を害し侵そうとしている』ことを意味します。―テサロニケ第一 4:6。

12 適切な正しい制限を無視するなら何らかの懲らしめが与えられることがわかると,子供は自分たちに課された制限を認めるようになります。また,親のき然とした態度と導きによって,子供は満足のいく生活を送るために必要な自己訓練をするようになります。わたしたちは自戒するか,または他から懲らしめられるかのどちらかです。(コリント第一 9:25,27)もし自戒することに努め,子供たちもそうするように助けるなら,親も子供も問題や悩みのないより幸福な生活を送ることができます。

13 子供たちに与える指針と制限は,子供たちによくわかるもの,公平なもの,情状を酌量する余裕を持つあわれみ深いものであるべきです。期待しすぎてもいけないし,またその逆でもいけません。子供の年齢を忘れないでください。子供は年齢に相応した行動しかしないからです。ですから,子供に小さな大人になることを期待しないでください。みどりごであったときにはみどりごのように行動した,と使徒は述べています。(コリント第一 13:11)しかし,いったん無理のない規則を設けて子供たちにそれを理解させたなら,直ちに,しかも首尾一貫してそれを実施してください。『あなたがたの“はい"ということばは,はいを,“いいえ"は,いいえを意味するようにしてください』。(マタイ 5:37)約束を守り,言行が一致していて気まぐれでない親を,子供たちはほんとうに心強く思います。自分を支えてくれる親の力を感じ,問題が起きたり助けが必要な場合にはその力に頼れると思うからです。悪行を正す際に親が公平で,しかも建設的であるなら,子供たちは安心感や安定感を得ます。子供たちは自分がどんな立場にあるのか知りたがるものですが,そのような親を持っている子供は確かにそれを知ります。

14 子供が親の命令に反発するときにき然とした態度を示すには,親の側に決意が必要です。そのようなとき,罰を与えると脅したり,子供と無益な口論をしたり,あるいは子供に物を与えて言いつけたことをさせようとしたりする親がいます。しかし多くの場合,き然とした態度で,また自信を持って,今すぐそれをしなければいけませんと言うだけで事は足ります。向かって来る自動車の前に子供が飛び出そうとするなら,親は取るべき行動をはっきりした言葉で子供に告げます。この問題を研究しているある研究者たちは次のように指摘しています。「ほとんどすべての親は子供たちに学校へ行くこと,……歯をみがくこと,屋根に登らないようにすること,ふろに入ること,などをさせる。子供たちは反抗する場合が多いが,それでも親が本気で言っているのを知っているので従う」。指針と戒めを首尾一貫して徹底させるときに初めて,あなたは子供が『あなたの指針やおきてを絶えず自分の心に結びつけておく』ことを期待できます。―箴 6:21,新。

15 親が気まぐれやその時の気分しだいで,指針に従わせることをしたりしなかったり,あるいは不従順な態度を取ってもすぐに懲らしめなかったりするなら,子供は大胆になり,どの程度まで言いつけに背けるか,どれぐらいうまくやりおおせるか試してみます。すぐに罰を受けないと見えると,大人と同じで,悪いことをすることに大胆になります。『悪い業に対する刑の宣告が速やかに下されなかったので,それがために人々の子らの心は己の中で悪を行なうよう凝り固まってしまいました』。(伝道 8:11,新)ですから心に思っていることを言い,また言うことを実行しなければなりません。そうすれば子供はそういうものなのだとわかり,ふくれ面をしてもわめいても,残酷で冷たい親だと思っているように振る舞ってみても,なんの役にも立たないことに気づくでしょう。

16 そのためには話す前に考える必要があります。急いで作った規則や命令は適切を欠いている場合が少なくありません。「聞くことに速く,語ることに遅く,憤ることに遅く」あることが大切です。(ヤコブ 1:19)懲らしめが公平を欠き矛盾しているなら,子供が持っている当然の正義感にさわり,子供は心に怒りを募らせるでしょう。


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