なぜ2世はムチなんだ? 中編

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

火曜日

その日は私が小学校2年生の最初の頃で1964年の寒い時期でした、火曜日の聖書研究会(今の聖書研究)の終了後にいきなりムチの発表が始まりました。

当時は長老制度も排斥制度も無い時代で、監督(長老)と補佐の兄弟(奉仕の僕)と会計と書記しかいない時代でしたので、通常通りに聖書研究会が終わった後に、組織からの連絡事項の伝達の時間となり、監督が三田ベテル(海老名ベテルが無い時代)から送られてきた会衆宛の手紙を読み上げ、「悪いことをした子供の心の中にはサタンが宿っています。子供の心の中からサタンを追い出すために、ムチを使ってサタンを追い出しなさい。これは神のご意志です。」という発表がありました。

そしてもう一通の個人宛の手紙を見ながら「子供が悪いことをした場合は、聖書に基づいて、子供が納得するまで時間をかけてよく言い聞かせ、子供が罪を認めたならば、椅子にひざまずかせて、自発的に子供にパンツを下ろさせて、親は皮のベルトで力一杯お尻を20回叩いて下さい。そして叩き終わった後、必ず子供を力一杯抱きしめてください。この場合のムチとは、女性用のウェストベルトの事です。」と言う解説が出ました。

この瞬間、子供達は沈黙の大パニックになりました。

その後質疑応答が始まります。私は監督の言っているベルトとは、サンディさんの奥さんや、立川基地のアメリカ人女性達の使っていた、当時の流行の牛皮製で直径2センチ位の円断面のウェストベルトの事だとすぐに見当が付きましたが、当時の日本女性の使っていたウェストベルトの流行の主流は、ぺなぺなのビニールエナメルのベルトで、値段も牛革が5千円位、ビニールエナメルは800円位の時代でしたので、(高卒初任給1万円以下の時代)牛革のベルトなんて高級品をしてる人は1人もいませんでした。そのうえビニールエナメルは材質がぺなぺなですから、ムチとして使うには物理的に無理があります。そう思っていたら1人の母親姉妹がいきなり自分のベルトを外して高く掲げて、「このベルトじゃ力が入らないから無理です」と言い出しました。

そうしたら、監督は特別開拓者としばらく話し合い。「牛革製で女性用の直径2センチ位の丸い断面のベルトが理想なんですが、それが無い場合は男性用の細身の皮ベルトを使ってください。とにかく大事なことは子供に自発的にパンツを下げさせてお尻をムチで力一杯20回叩くことです。その時は絶対に手加減しないでください。それがご意志です。」と言って集会はお開きになりました。

沈黙のパニックになった子供達は目で会話しあって、自分の母親だけはそんな事はしないよなって合図していたのですが、集会がお開きになった後、母親達が集まって、うきうきしながらムチの実施方法の解釈について話し合うのを見て、子供達は全員絶望の底に叩き込まれました。(大人30人位子供5人位)

特に私の母親はアメリカ人JW家庭直伝のムチの経験者ですから、母親全員に質問されて、あっちのグループこっちのグループに移動して、ムチの使い方や手首のスナップの効かせ方まで教えるありさまで、私は他の親はともかく自分の親に限って絶対に逃げられないと絶望の底に落ちていきました。

木曜日

神権宣教学校でムチの記事が取り上げられ、火曜日の集会後の三田ベテルの手紙の発表を聞いていない人には全然理解できないけど、手紙の内容を聞いた人にはだめ押しするような記事を学びます。

こらしめの与える訓練によって実を結ぶ

(1) 聖書の教える物の見方をしない人は、こらしめを受けることを望みません。しかしクリスチャンャンはこらしめを受けることを喜びます。それはご自身の民に対する神の愛の現れです。従ってクリスチャンは、「エホバのこらしめを軽んじてはならない」と述べた使徒パウロの助言に従います。(ヘブル、十二ノ五)こらしめは生命の道であり、義の実を結びます。けんそんにこらしめを受け入れる人は、この事を知っています。-ヘブル、十二ノ十一。

(7) エホバとみ子キリスト・イエスの愛あるこらしめを受け入れるとき、正義という平和の実を結んで喜びを得ます。同時に家庭聖書研究によって謙遜な人を教えるとき、エホバの是認を得て、新しい秩序の下に生命をかち得るように、人々を効果的に援助することになります。

御国奉仕 一九六四年五月一日 第七巻第五号 日本版

これだけ読んだら一般人には絶対にわかりません。しかし事前に三田ベテルの手紙で、ムチの目的と具体的な使用方法を聞いていたら、組織が何を望んでいるのか一目瞭然です。マスコミにばれた時の事まで考えたJW組織の犯罪的な発表のしかたは毎度の事です。

(御国奉仕のスキャン画像)

この日、早くも最初のムチの被害者第一号が出ます。その子は4歳位男の子で木曜日の昼間に叩かれました。組織の指導通り、聖書を元に言い聞かせようにも、聞いても絶対に理解できないんじゃないのかと思うくらい幼い子でしたが、母親姉妹達はそんな事にはお構いなしでその母親姉妹を絶賛していました。そして、それを聞いた子供達はムチの恐怖から緊張しまくりで、集会中いつになく静かにしていましたが、それを見た母親姉妹達は、普段はざわざわしているのに、組織のムチの発表だけで子供達がこれほどおとなしくなるのに狂喜乱舞で、集会後に全員「エホバは偉大よねー」を連発していました。


戻る 次ページ